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#005 正確な答えを得る質問の必須条件とは?--理系各員に捧ぐ

本シリーズは、①勉強頑張ったら選択肢が増える、②理系かつ高成績の方が選択肢は多い、③選択肢が多いと良い会社に入れて幸せになれるというよくあるお話の②まで必死で頑張ったものの、③は半分嘘である。ということに気付いて四苦八苦した私が、理系が気付かぬうちに罠にハマらないために、考えて損のないトピックを書いていくものである。

実は昨日さらっと記事タイトルを、理系各員に告ぐ→理系各員に捧ぐ、と変更した。このシリーズは、人間の特性上、理系が特に陥りやすく抜け出しにくい罠にハマらないようにと願って書いているものだからだ。この罠にハマらなければ、理系各員は社会を一変させる力があると私は信じている。

前回は、他責マインドに陥りやすい理系の特性について紹介し、自責マインドに切り替えると前向きに生産的に生きることができるという話をした。今回は、正確な答えを得るための質問の方法について記したい。

この質問という話題は、少し前回の話と関係がある。質問の場面では、質問する側のスタンスが割と如実に出る。相手を非難する意図を込める人や、目的を達する誠実さを持つ人など、抽象的に言えば後ろ向きな人と前向きな人に大別できる様々な人がいる。どっちタイプの人がどういうマインドを持つのかは、前回の話から自明だ。

ここでは、質問を前向きなものとして扱う。つまり、自分の目的を達するための質問や、相手との議論を進めて相手の潜在的な目的を達するための質問などを扱う。こういう質問に必要なのは、①客観的な自分の状態の認知とその伝達、②自分は何を達成したいか、の2つを明確に述べることである。現在位置とそこから向かいたいベクトルを相手に伝えるのだ。

まず①の要素について考える。①の要素をさらに分解すると、a)自分に届いた言葉、b)それを自分がどう解釈したか、の2つに分けられる。a)は、今取り扱いたい議題を定義する。b)は、その議題に対する現在の自分自身の状況(理解度など)を伝える。この2つのうち、どんな場合も必ず伝えるべきはa)の自分に届いた言葉である。質問というのは、何かの情報を受けた自分が、現在の自分の知識の中で、その情報の意味を理解できないから生じる。したがって、質問のときにb)だけを投げかけるのは、ダメだということがわかる。b)はあくまで自分の現在の解釈を伝えるだけなので、b)だけでは今話題にしたい対象を正確に相手に伝えられないからだ。
具体例を出そう。ここ最近、大学は急なオンライン化をしていて、学生は教員から出される様々な課題を提示された形式で提出することを求められている。学生が混乱することは避けられないので、様々な質問を受ける窓口が設置されている。そこで学生が「○○の講義で、レポートを提出しないといけないんですが、これはルーズリーフに書いたものをメール提出するんですか?それとも指定のレポート用紙でしょうか?」と質問した。これが典型的なb)のみを伝える質問だ。質問された側は、a)にあたる情報が欲しいので、「まずレポート提出の要件が書かれた文面を見せてくれないか?」と返すことになる。それを読んだらなんと、綴じられたノートに書いて、それをPDFにして、大学のシステムを通して提出せよという指令だったりすることだってある、かもしれない。
こんな勘違いが起きないためにも、自分に伝わった情報をそのまま質問に含めることは大事だということだ。

次に②の自分は何を達成したいのかを考える。①でa)を伝えると、質問された側はその部分に関する自分なりの知識を頭に展開する。先程のレポート提出の例の場合、レポートの書き方の話題、レポートの出し方の話題、レポートの評価方法の話題、など様々な内容が頭に浮かぶ。質問者は②で、この様々な話題のうち、どの情報を出して欲しいのかを伝える必要がある。これがベクトルの方向だ。さらに、その方向についてどれだけ知りたいかというベクトルの大きさも伝えられると良い。レポートの評価方法なら、A/B/Cを付けられることだけ知りたいのか、レポートのどの辺りを特に評価するのかまで知りたいのか、レポートの評価が講義全体の評価にどう繋がるのかを知りたいのか、その詳細さが色々ある。

以上が正確な答えを得るための質問の方法だ。質問という行為をメタ認知して、論理構造を分解すると上で紹介したようになる。この全体像が見えて質問する人と、これが見えずに質問する人では雲泥の差が開いていくこと間違いなしだろう。ただ、知ってるだけでは意味がなく、どんどん実際の質問をすることで質問力は伸びる。質問をして、この記事の分解と見比べながら期待した答えが返ってきたかどうか確かめて、その結果に応じてまた次の質問に磨きをかけるサイクルをどんどん回そう。

次回は、競争について書いてみる。理系世界は技術のトレンドというのがあって、人気研究室がどうしても偏る。そして研究室配属のときは、たいてい成績順で選択権が与えられる。したがって、学士時代の成績争いでは蹴落とし合いなどが起こり、まさに競争の世界になる。なかなか息苦しいものだが、これも解釈次第で気持ちよく生きることができるようになるのだ。ではまた次回、よろしくお願いします。

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