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回想や懐古の類

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書き留めておかないとある日ふと思い出すこともないのではという、記憶とも呼べないけれどさっとよぎる過去の情景やちょっとした感情のメモ。
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#思い出

おとむらい

彼のいる場に私がいなかったり、私のいる場に彼が来れなかったり、と直接会ったことはない友達の友達。でも友達がよく彼の話をするから、どんな仕事をしていてどこに持ち家があって地元はどこで、みたいなことまで知っている。そんな彼が亡くなった、という話を聞いた。私と同い年の彼。私の友達のとてもいい友達だった彼。 お盆だからか、彼の話を聞いたからか、亡くなった人たちのことを思う日々が続いたので、今年の私の追憶を記す。 父方も母方も、祖父母はみな私の20代でいなくなってしまった。どちらの

紋付さんの来る庭

ジョウビタキの声が聞こえる季節になると、父方の祖父母の庭をまた思い出す。金木犀、金柑、南天、ツグミ、石蕗、メジロ、椿、れんぎょう、沈丁花、すみれ、にわぜきしょう、アメンボ、つつじ、さつき、ニラの花、牡丹、てっせん、ほたるぶくろ、アブラゼミ、百日紅、コオロギ、柿、ヒヨドリ。季節の移り変わりを緩やかに告げる庭。 縁側の正面からすこしずれて左斜めに見える池(黒い鯉と赤い鯉が2匹ずついた)や、下の道路から上がってくる階段の脇を固める茂みや木々(常に完璧な姿の松を仰ぎ見て階段を上がっ