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回想や懐古の類

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書き留めておかないとある日ふと思い出すこともないのではという、記憶とも呼べないけれどさっとよぎる過去の情景やちょっとした感情のメモ。
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#日記

たまにある誰かが裏で糸を引いているような連鎖の話

できごとの各々はまったく大したこともなく、日常的なものだ。 仕事のキリがよかった。会社の近所に住む先輩からの連絡。一緒に飲む。帰りの地下鉄で知人からの連絡。 なのに、これらがなぜか一本の糸でつながるようなことが起きる。まるで誰かが裏で糸を引いているかのように。 木曜日が祝日なので、同僚の多くは金曜も続けて休暇を取っている。そのせいか水曜の午後から執務室に充満し始めるそわそわ感。つい影響されて仕事のキリも早めにつけたくなる。 雰囲気に流されやすいことにかけては上位数%(母数は

2022年買ってよかったもの(こと)

個人的に「革命だ」と思う買い物が今年はいくつかあった。 前書きをマーサ・スチュワートに書かせるスヌープ師匠の料理本いや正直この面白さをもっと世の人に知ってほしいからnoteに書いておこうと思ったくらい革命。マーサによると、2008年にマーサがホストのTVショウに師匠が出演したのが友情の始まりらしい。 日本語訳版もあるけど、これはぜひ原語で。なぜなら師匠はラッパーのため、彼の言葉を正確に訳せる日本語はない。わたしは横着して日本語版を買ったものの、英語版を買い直した。 今年の

ちょっと通ってきた道

オリビア・ニュートン=ジョン、イッセイミヤケと、訃報の続く週だった。ひとりでニュースを見る分には淡々と処理する程度の、「あの曲聴いてたな」「あの服着てたな」を記憶から取り出しまた埋める作業をささっと終えて、次の仕事に取りかかる。 夜、いつもの酒場へ行く。 隣はノースリーブの似合う腕とうなじを持つ器屋さんとお連れさまだ。お互い軽く会釈の後、各々の世界へ。 「イッセイさんも亡くなっちゃったねぇ。」揚げ物を仕上げた店主がザクザクとそれを切る音が響くなか、お連れさまがぽつりと言った

イーストトーキョー偏愛譚

イーストトーキョーに居を構えて13年めの初夏がきた。 曳舟10年、観音裏3年の暮らしの中で、(いまだのぼったことのない)スカイツリーが建ち、行きつけの銭湯は閉業、地上を這っていた線路が高架になり、あれほど嫌悪していたランニングの週1習慣化、街も私も変わった。変わるからこそ、好きな景色は増え続ける。 三社祭が止まって3回めの初夏、好きな景色を通した自分の視点を綴っておく。 スカイツリー 鉄骨は好きですか?わたしにとっては唯一無二の愛する対象です。 あれほど無駄なく美しさと機

忽然と消えた夏の残り香に合う曲10選

8月のとある週までは、朝6時台でも痛いほどに肌を刺す陽射しで、肺呼吸はもとより、皮膚呼吸さえもできないほど重たい湿度が身体にまとわりついていた。まとまって降り始めた雨は、それらをすべて洗い流し東京から夏を遠ざけた。 タオルケットにくるまる心地よさで室温の降下を感じ、夏の終わりを寝ぼけた頭と身体で受け止めるといういつもの儀式ができなかった今夏。忽然と消えてしまった夏を思い出しながらも、戻ってきてほしいわけではない気持ち。そんなタイミングで聴くといい気分になれる10曲です。 1

おとむらい

彼のいる場に私がいなかったり、私のいる場に彼が来れなかったり、と直接会ったことはない友達の友達。でも友達がよく彼の話をするから、どんな仕事をしていてどこに持ち家があって地元はどこで、みたいなことまで知っている。そんな彼が亡くなった、という話を聞いた。私と同い年の彼。私の友達のとてもいい友達だった彼。 お盆だからか、彼の話を聞いたからか、亡くなった人たちのことを思う日々が続いたので、今年の私の追憶を記す。 父方も母方も、祖父母はみな私の20代でいなくなってしまった。どちらの

音楽と記憶③

書けば書くほど連鎖的に記憶がつながっていくのが音楽。いや、たぶんただ思い出話をしたいだけだわ。 Richard Clayderman " Ballade Pour Adeline "小学校の給食の時間、曜日ごとに趣向の異なる音楽や先生のトークが流れていたが、木曜日は色白で黒縁メガネの左近先生の時事トークだった。時事トークと気づいたのは4年生くらいになってからで、それまでは「声のいい人がしゃべっている」程度だった。で、その左近先生の日のオープニングとエンディングがこれ。今でも

音楽と記憶②

思ったより記憶偏重になった①から脱却して、②は140文字程度でガシガシいきたい。 Weather Report " Birdland "幼稚園の頃、父親がずーっとギターで練習していた曲。会社の人とバンドを組んでた父は、会社や地域イベントで時々ステージに立って演奏していた。あともう1曲、独特のギターリフの曲があったのだが、鼻歌検索だと私が下手すぎて探せないので、今度実家に帰ったら曲名を特定する予定。 若かりし頃は安いギターしか買えなかったからと、60近くになった時にレスポール

音楽と記憶①

聴いてる音楽節操ないよね人格分裂してんじゃないの(親しい間柄なので別に悪意はない、はず)と言われることがあり、自分としてはその時聴きたいものや目的に合わせて選んだものを聴いているだけなので、なんで節操ないように見えるんだろうと少し考えた。 おそらく私にとっての音楽は、場面や時間を構成する1パーツなのだ。似た「その時」はあっても、自分の感情や周囲の環境がまったく同じ「その時」はない。水流や夕焼け空の色のようにうつろう。だからそこへフィットする音楽も変化していく。んじゃないか、と

東京から出なかった6ヶ月間をカメラロールで振り返る

親友の娘の一周忌があり、2月の末に大阪へ帰った。 真鶴にあるお気に入りのお鮨やさんへ、8月末にお昼ご飯を食べに行った。 その間の6ヶ月、文字通り一歩も東京から出なかった。母方の祖母の命日前後に合わせて潜りに行く名護の旅も、贔屓のサッカーチームのアウェイ遠征もないまま秋に突入している。幸い、隅田川沿いの平坦な地にある我が家の周りには暮らしを支えてくれる様々な存在があり、徒歩圏内で暮らすことの不便も不満もまったくない。新しく買った家も2年が過ぎ、カスタマイズとメンテナンスを本格始

ただの懐古趣味ではなく古きと今を敬い審美眼を磨く決意

生まれ育ち、一時期働いていたこともあり、阪神間に残る「いいお金の使い方をした」建造物や意匠がとても好きだ。幸運にもそういったことに造詣の深い両親や友達、先輩や同僚が近くにいたので、あちこち連れ回してもらいたくさんの本物を自分の目と手で見ることができた。新歌舞伎座を正面から見るには絶対車からだと同じ道を何度も走ってくれたり、うちの大学は絶対見るべきだと府外に進学した私を長期休暇のたびに大学内へ誘ってくれたり、少し危険な界隈の散歩に面白がって付き合ってくれたり。そして味気ない通勤

実録ひとり飲み 五感ver.

たまにひとりで集中して五感を最大限に稼働かつ開放させることが好きだ。たいてい、というかいつもそれを飲み屋でやる。だからひとりで飲むのが好き。 お値段や立地で頻繁に行けないところもあるけれど、勇気を出して開けた引き戸から始まる小さな支流たちがモルダウのメロディのように大河へと統べられていくさまが滑らかにどんぴしゃだと、偏愛というか恋に落ちるレベルで好きになって通うようになる。そんなところで落ちてないで、人を見ろよ伴侶を探せという話は置いときます。 昨日、早い時間から好きな飲み

九州散文

年明けにプレゼンした福岡の仕事が取れたので、1ヶ月に1-2回のペースで通っている。 博多駅でさまざまな行き先の列車を見るにつけ、これまでに蓄積された九州に関わる記憶が断片的によぎっては消えていくので、消えないよう書き留めてみた。 九州は、父の弟、つまり叔父が熊本は田浦(新幹線の新八代が最寄り駅になった!)のみかん農家へ婿に入ったため、その叔父の結婚を皮切りに、連休になると父の実家である名古屋から父の兄家族と祖父祖母がワゴンで西へ下ってきて、当時枚方在住であった私たち一家のワ