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立華高校マーチングバンドへようこそ 前編 響け!ユーフォニアムシリーズ 武田綾乃

『オレンジの悪魔』

そんなこんなで
響け!ユーフォニアムシリーズの、スピンオフ作品であります。
『リズと青い鳥』は、アニメ作品としてのスピンオフであって、原作としては本編の一部でありますから、正真正銘の公式スピンオフ作品であります。
本編主人公(狂言回し?)の黄前(おうまえ)久美子の中学時代の盟友である、佐々木梓が入学した立華(りっか)高校の、吹奏楽部での日々が描かれています。
本編でも梓は折々に登場していましたし、立華高校も"水色の悪魔"と称される、吹奏楽の強豪として度々名前が出ています。

立華高校のモデルは、上記の京都橘高校で、たちばな(立華)とも読めますね。
因みに、本編で福岡県の強豪として登場する清良女子高校のモデルは、精華女子高校だと思われます。
京都橘高校も元は女子校でしたし、吹奏楽部の女子率の高さもありますし、強豪を生む下地があるのかも知れませんが、勿論男子校でも強豪が存在するのは、本編からでも伺えます。
まぁ少子化の時代となって、女子校や男子校と言う存在は、そもそもが希少ではあります。

さて、タイトルからも判る様に、今作も吹奏楽部が舞台ではありますが、全日本吹奏楽コンクールの座奏では無く、マーチングコンテスト(マーコン)が主体となっています。
ブラスバンドが行進しながら演奏する姿は、珍しいものでは無いかと思われますが、マーチングは更に複雑なフォーメーションで動きつつ演奏すると言う、最早演舞に近いものですね。
座奏が56人で、文字通り息を合わせるだけでも凄い事だと思っていますが、これがマーチングとなると81人で息を合わせて、動きも合わせる訳ですから、想像を絶するものがありました。

立華高校では、全日本吹奏楽コンクールにも参加しますが、マーチングが本命とは言え、二刀流でありますから日々の練習も濃密でありますし、各部員の意識の高さもありました。
全国へ、二つ名を戴く程に名前を轟かせている強豪校でありますから、各地から優秀な新入生が集まってくるのも当然です。
自主性に任せている部分も大きくて、寧ろ自主的に取り組めなければ、厳しい練習には耐えられないのかも知れません。

トロンボーン奏者として梓は、憧れの立華高校に吹奏楽推薦で入学しました。
入学式前の春休みから練習に参加しており、如何にも強豪校の期待の新入部員でありますね。
スポーツ系の強豪校ではよくある事ですが、吹奏楽も座奏ですら運動部と言っても過言ではありませんし、更ににマーチングは運動部そのものだと断言しても良いでしょう。
そう言った厳しい環境に、自ら身を置いて頭角を顕して行く梓は、全く努力を厭わないですし、完璧超人に見えました。
当初は。
危うい綱渡りをしている様にも見えて、そこ迄突き動かす原動力は、"好き"の一言だけでは理解出来ません。
負けず嫌いでありながら、周囲との調和を気にする辺り、孤独を恐れている様でもあります。
突出した実力を持ちながら、高坂麗奈の様な孤高の道は選択肢に無いのです。
尤も、麗奈も久美子と言う相方を得て、孤高では無くなっていますが、学校が分かれたとは言え、少なくとも梓がそのポジションと捉えていなかったのは、象徴的なのかも知れません。

因みに、麗奈は滝先生を追い掛け、立華の推薦を蹴って北宇治進学を決めた訳ですが、仮に立華に進学して座奏は兎も角、マーチングはどうしたんでしょうね。
ドラムメジャーやると言って、揉めたりしそうで怖いですが、落ち着く形に落ち着いたのは間違い無いでしょう。

危うさは感じても、ハラハラとする場面は多く無かったですが、梓の中学時代の友人である柊木芹菜(北宇治高校帰宅部)との再会はちょっとヒリヒリとしました。
悪意を直接ぶつける様な、相当に感じも悪かったですが、反発しつつもそれでも元は梓からアプローチした様ですから、何か感じ得るものがあったのかも知れません。

部員夫々に思惑はあれど、纏まるところはキチンと纏まれて、そこは強豪校らしく先ずは全日本吹奏楽コンクール京都府大会と言うところ迄が前編ですね。