石の博物館

石はどこにでもあるありふれたものだ。しかし、ひとたび足元の石を拾い上げると、それは特別な意味を持ち始める。角のないすべすべとした楕円形のもの、古艶を帯びた表面に一筋の白い線が弧を描くもの、灰色から濃い灰色を経て薄い青緑に変化していくもの。石を拾い上げると、その石は、時にどこか私を別の場所へ連れていってくれる。

石を探しに行こう。ある日、私は同僚に誘われて奥多摩へ向かった。

7月の初旬、まだ梅雨は明けていないはずなのに、日差しが容赦なく照りつけていた。石を拾うには少し暑すぎたけれど、私たちは川の浅瀬をサンダルのまま入り、裾が水に浸されるのを余所目に、夢中になって石を拾いあげた。川底で気持ちよさそうに鎮座する、ずっしりとした重みのある石。拾い上げると、石の表面は艶やかに濡れている。石は私に語りかける。薄墨色の下地に象牙色の小さな火花が無数に飛んでいる。それは宇宙に浮かぶ星々であり、そのまま私の内面の宇宙を映し出していた。なんて綺麗なんだろう。時間を忘れて、私はその石をしばらくの間、見つめ続けた。



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