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BTSと遊び

2023年4月9日、東京は快晴の心地よい春の日、わたしはお台場まで2度目のYet to Come in Cinemasを見に行ってきた。ScreenXという3画面の立体感を味わえるスクリーンであの素晴らしいコンサートをもう一度体感したかったのだ。

BTSのコンサートを見るとき、わたしはいつも、これは今、自分自身と向き合っている時間なんだと感じる。わたしは映画館の大きなスクリーンに映る映像と響き渡る音に包まれて自分に向き合う時間がとても好きだ。わたしの内側にいるBTSというひとりひとりが、大きなコンサート会場で、いきいきと全力で遊びまくっている、そんなイメージが湧いた。

スクリーンに映る7人の演者たちが圧倒的なパフォーマンスと音で会場を包み込み、大きなコンサート会場に埋め尽くす観客たちの手元にあるペンライトの光が、音に合わせてゆらゆらと揺れる。

このコンサートは、とにかくセットリストが素晴らしかった。BTSのファンだったら、誰もがそう思ったんじゃないかな。彼らの代表曲のひとつ、普段であればいちばん最後に最高潮の盛り上がりで披露されるMic Dropから幕を開け、その勢いのまま、初披露のRun BTSでもう終わりにしても良いんじゃないかってくらいに盛り上がった。

この2曲を続けて披露することにしたのは、彼らの覚悟の現れだろう。まだこの時点では公式には発表されていなかったけれど、この釜山のコンサートで、BTSとして披露する機会はしばらくないだろうとファンたちはある程度予感していた。メンバーの最年長であるJINの兵役義務の開始まで、リミットはもうすぐそこだと言われていた。

昨年の夏頃、ベストアルバムをリリースした直後、グループとしての活動をしばらく休むと公にしたなかで、急に発表された釜山での無料公演。たった1度だけ行われるその特別な公演に自分達の全ての想いをのせる、そういうチーム全体の気概が公演を通して感じられた。集中が切れる瞬間が一度もなく、一気に過去の代表曲を次々と畳み掛けていった。

真剣に遊ぶ。全身全霊で遊ぶ。今回、わたしは映画館での2度目のコンサートを体感しながら、そんな言葉が浮かんだ。今回、いつもの「叫べ!」に加えて、何度も、何度も、「みんな、飛べ!」とファンに向かって呼びかける声が印象的だった。彼らの歌と呼びかけに呼応して、ファンたちも遊びまくる、真剣に、歌って、叫んで。轟音と眩い光が波のように揺れる。

たしか5曲目の00:00あたりからわたしはもう半べそ気味で見ていた気がする。ここからボーカルラインの歌声を2曲連続で堪能する時間。ひとりひとりが驚くほど個性的で、唯一無二の美しい歌声なのだ。しかも、まさかButterflyをやるなんて思いもしなかった。

お次はラップライン。Ugh!のイントロが流れて、ボーカルラインが作った静謐な雰囲気から会場の空気が一気に変わる。この時、私たちはようやく彼らの小競り合いの演技を生で見ることができたのだ。この挑発的な曲は、やっぱり観客がいないと完成しない。オンラインコンサートで初めてこのパフォーマンスを初めて見た時、わたしは少し寂しい思いがしたことを思い出した。もしもパンデミックでツアーが中止にならなかったら、コンサートの度にこの曲でぶち上がるはずだったのに。それから、ナムジュンが披露するのは今回が最後と言って始めたCypher pt.3。3人とも、そんなに声を張り上げてなんで声がつぶれないのと思う。寂しい。最後と言わず、この先も何回もやって欲しい。

こんな調子のまま、次はパンデミックの申し子である彼らの代表曲Dynamiteで会場の雰囲気はまたガラリと変わる。改めてこの曲を過去の名曲と並列で聴くと、新鮮で、驚きに満ちた感情に襲われた。なんでそんなに楽しそうにパフォーマンスをするんだろう。全力で遊ぶ、という言葉がまた頭に浮かぶ。

その次は、私にとって一番思い入れが深い2019年に発表されたBot with Luv。この曲はなんでか知らんが、わたしはコンサートで見ると涙腺スイッチが必ず入る。とてつもなく明るいのに、明るすぎて、眩しくて、どうにも切なくなるのだ。楽しい時間には終わりがあるのかもしれないと予感させる何か。その切なさがどうしようもなく好きだ。

そこから息つく暇もなく、Butter、Ma City(!!!!)、Dope、Fire、IDOLと、絶対盛り上がる曲で畳み掛けてくる。見てるだけで息が上がりそうなのに、体力おばけだ。いや、1度しか行われないコンサートだからこその、このてんこ盛りセットリスト。また、彼らのコンサートを現地で体感したいな〜と心から思う。

最後に近づくにつれて、さらにしんみりしてくる中でYoung forever、イントロが流れるだけで泣けちゃうね。サビが良いのはもちろん、ナムジュン、ユンギ、ホソクと繋がる、韻の響きがとても心地よいのだ。

最後は一番最近発表されたFor Youth、コンサートで聴くと、とてもぐっとくるね。アンコールはSpring DayとYet to Comeで穏やかな感動とともに締めくくられる。彼らの表情は、最後どこか清々しかった。未来のことは、もちろん不確定なことも多いけど、2025年に再びまた7人のパフォーマンスが見られることを楽しみに。

長いようで、あっという間なのかもしれないね。





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