サビアン小説 1-6

遥か遠い星からやってきた7人の生命体が夜の海を航海していた。一人は水先案内人であり、一人は船そのものであり、そして残る五人は客として招かれた船の乗客だ。海は至るところで渦を巻いている。この渦に飲み込まれると船は沈没してしまうわけだが、水先案内人と船は上手に渦を避けながら夜の海を航海した。

空はとても明るい。青い流星群が次々と光っては消え、遠くに見える穴から白い雷が海に向かって落ちる。赤、黄色、紫、青色の渦を作った大きな星が、上空をジグザグに移動している。五人の乗客は、この景色を見るために、わざわざ地球にやってきたのだ。

「あちらに見えるのは、獅子座流星群です。今から約30000年前に光を放った星を、私たちはこうして眺めているのです。」

水先案内人は、青い流れ星の方を指差して言う。乗客のひとりはそれを聞いて嬉し涙を流す。
「なんて美しい。この景色を見られたのなら、もうどうなっても構わないわ。」
「それはよかった。実はこの旅はもうそろそろ終盤なのです。あちらをご覧ください。」

水先案内人が指を差した水平線の先に、黄色に光る一筋の線が見えた。

「あそこに窓があります。あの光は、私たちの故郷から放たれている光です。あの窓を越えると、6億光年離れた私たちの故郷につながっています。」

「果たして、ちゃんと故郷に戻れるんだろうね。まぁ、どうでもいいけれど。」乗客のひとりが不満を漏らした。

「それはもちろん分かりません。地球でこうしていると、いろんな物質を一度にたくさん見ることができますが、あの窓を越えると、何もない世界が広がっています。この景色にずいぶん慣れたでしょうから、ある一定期間、何もない状態にお客様方が順応できるかどうかが鍵です。」

「それはそれは、大変かもしれない。しかし、この景色を見ることができたので、私たちはここに来ることができてとても満足しています。」もう一人の乗客が満面の笑顔で言った。

こうして、船はやがて窓を越えていき、見えなくなった。


1-6 A square brightly lighted on one side.

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