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宇和ゴールドと新年度

スーパーの青果コーナーの前に小ぶりなダンボール箱が置いてあった。
中を覗くと絵の具の”きいろ”を垂らしたような、ビタミンカラーの柑橘が入っていた。

手に持ってみると、しっとりと冷たく、ずしりと重みがある。
一瞬で、「あ、これ美味しいやつだ」とわかった。

1個カゴに入れて試してみることにした。
変わった名前だったがすぐに忘れてしまった。

レジでスタッフの男性が「これの名前なんだっけ・・」と悩んでいる。
ですよね、わたしも忘れてしまった。

「確認します」と行って売り場に行った男性が、
「宇和ゴールドでした!」
と返って来て笑顔で教えてくれた。
そうか、この黄色いフルーツは宇和ゴールドというのか。


夕飯後に娘と半分こすることにした。
厚めの皮に果物ナイフで切り込みを入れて、親指で剥いていく。
皮の中からころんと一回り小さい中身が出て来た。

薄皮を剥く前からものすごくジューシーなのが分かる。
薄皮を剥いている間に果汁が滴ってしまうものだから娘もわたしもとっさに口元で果汁をキャッチする。

甘夏のようでいて、どこかグループフルーツを思わせるその柑橘は、少なくとも今年食べたフルーツの中で一番美味しい!と言い切っても良いくらい、ジューシーで爽やかで甘酸っぱかった。
一房食べるごとに「美味しい…」とつぶやく母の横で、娘は黙々と食べ進めていた。


次の日スーパーに行ったら、まだあの段ボール箱に10個位残っていた。
全部買ってしまいたい衝動を堪えて2個だけカゴに入れた。
素通りしてしまう人たちを見て、もったいないなぁと思うと同時になんだか得したような気分になった。

+++

どたばたで新年度を迎え、クラスはそのまま持ち上がり、ロッカーの位置と運動帽の色と、先生が変わった。
明るくてハキハキした女性の先生だ。

そんなに大きな変化はない、と大人は思うのだけれど、こどもはこどもなりに何か変化を感じている様で、娘はこの一週間、ちょっとだけ不安定だった。
不安なようで、夜になるとママ、ママと甘えてきた。

本人にしてみれば、そりゃ大きな変化だよね。
大したことないと気にも留めなかったことを少し反省した。

そんな不安気な娘も、宇和ゴールドを食べる時はそのことしか頭にないようで、束の間不安を忘れているようだった。
好きなものを真剣に食べる姿は尊い。


宇和ゴールドと新年度のどきどき。
来年から我が家の風物詩になるかもしれないな。

それでは、仕事いってきます。
良い一日を!
(金曜日。ハーゲンダッツ買って帰っちゃおうかな・・。)






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