kindle談議

 地下鉄で移動中にはkindleで読書する。本を読んでいるところを邪魔しに来る人なんかいないと普通は思うのだが、なんと短い期間に二回も隣に座っていた人に話しかけられた。わたしは外から見て決して親しみやすいわけじゃないし、人目をひくほどに美人であるわけもないから、他人から声をかけられるなんてめったにないことだ。

 1回目は声が大きいおじさんで、わたしが持っていた端末(kindle white paper)を見て「それは本なのかい!?」と聞いてきた。単純に、そういった進んだものがあるということに驚いているようすだ。その後も「中の本はどうやって買うのか」「安いのか」「どういったしくみになっているのか」ということを聞いてきたので、地下鉄を降りるまでの短い時間で説明しようと試みるも、なかなかこの「説明する」ということが難しい。ネットで買ってダウンロードします、の「ダウンロード」って言葉は果たしてわかっているかなとかいろいろ気を遣ってしまうものだ。結果、満足な説明ができず、おじさんごめんなさいって雰囲気になってしまった。

 2回目はおそらく60代くらいの年配の女性で、「それ(端末)は月いくらなの?」と尋ねられた。ああ、これはおそらくタブレットとかスマホと勘違いして聞いてきているのだなとわかったが、タブレットではなくて電子書籍であるということを説明することがなかなか難しい。ただその女性はあまり深いところまで知りたかったわけじゃないらしく、「時代が進んだ、技術が進んだ」という話を誰かとしたかったようだ。これはタブレットやスマホではなくて本なのです、と答えると、「便利になったわねぇ。でもこういう進んだ技術というのはずーっと昔に誰かIQの高い人が思いついて、できるかできないかわからないところから努力して努力して実用化させたんだわねえ。ないものを思いつくという発想力ははすごいわね」といった方向に話は発展した。

 わたしのつたない説明で「そこまでいいものなら自分も使ってみよう」という流れにはならなかったからAmazon的にはなんの利益にもつなげられず申し訳ないが、隣の席にたまたま座った人生の先輩と、こうして話をできたことはわたし自身の利益になった。

 ところで、kindleってなんであるか、どうやって説明するのが適当なんだろう?それ以前に説明するって難しい。相手がどこまで理解しているのか様子をうかがいながらというのはなかなか高度な技術を要するなぁ。

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