旅で一番楽しい時間

 いろんなところに出掛けて行けるのも今のうちだなと思って、この2年くらいは国内をあちこち旅している。わたしには、まだ行きたいところも、見たいものもいっぱいある。

 旅の間は邪魔にならない程度の小さいノートを持って、隙間の時間で見たこと思ったことをひたすら綴る。もはや、遊びに来ているのか宿題片付けに来てるのかよくわからない。

 時間がもったいないって思ってしまうので、旅の間の予定はギッチギチで、余裕をもってじっくりのんびりという「おとなの旅」はまだまだできずにいる。あそこへも行きたい、ここもはずせないととても忙しい。

 そのくせ、その予定詰め込み放題の行程で、正直ここはハズレだったなというところは半分くらいある。なので、すべての行程が済んで家に戻ってきたときに、全体としてすごく楽しかったかというとそうでもなく、少しモヤモヤしてしまうのだ。そう、わたしは気付いてしまった。

 旅で一番楽しいのは、行くときと帰るときであるということに。

 そんなこと言ってしまっては元も子もないんだけど、もっと掘り下げて考えてみた。

 旅のなかで、出発の時間は格段に楽しい。これからの予定をあれこれ思い描き、ワクワクする。駅や空港で、同じように出発する人たちのなかに流れている「期待感」に触れると余計にテンションは上がる。これから何かが始まる、というその予感がたまらなくいい。

 そして旅を終え、これでもうあと帰るだけ、という時間も出発の時間に次いで楽しい。動き回って疲れた体で、旅の最中に起こったことをいろいろと思い返し、家に帰って落ち着いて、テレビでも観ながらお土産を広げることを思い浮かべるのが楽しい。

 案外、旅の行程のそのさなかにいる間は楽しさというのは感じないのかもしれないな。

 そして、あんなに行きたいと切望していたところに関わらず、帰ってきたらば「ああ、やっぱりウチが一番だわ」と思ってしまうのも、いい。

 そして、また懲りずに旅に出る。今まさに出発の時間だ。

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