ジイちゃんでてきた

 数日前に、雪がドカっと降った。あまりに急だったため除雪も追いつかず、道路はガタガタ、歩道はツルツル。ほんとうにキケンである。

 こんな日になると思い出すことがある。何年前だったか、こんなドカ雪が降ったあとのことだった。

 その日、出先から帰って青空駐車場に車を入れた。いきなり積もったので除雪はされていなくて、車のまわりはふかふかの雪が山みたいになっていた。特に、車の後方は、気をつけないとマフラーが埋まってしまうほどの山だったので、若干前のほうに停めて、マフラーが呼吸できるようにしたのである。

 ヤレヤレ、ひどい雪だと思いながら車を降り、鍵をかけて何気なく後方の雪の山を見たときに、見つけてしまった。

 雪の山から人の手らしきモノが・・・!

 ひえええっ!人の手?どゆこと?

 おそるおそるその手をひっぱってみた。そしたら、中から小さいジイちゃんでてきた。大丈夫、生きてた。なんともなかったよ。

 ジイちゃんはこの駐車場のすぐ裏手の家にひとりで住んでいるらしかった。その家の庭と、こちらの駐車場の境界には柵とか塀は一切なくて、雪が積もった状態では、どこが境かわからなくなっていて、その状態の中、ジイちゃんはじぶんちの庭の雪よけをしていて、気づかないうちに駐車場の敷地内に入ってしまい、さらに雪に足をとられてふかふかの山の中におしりから埋まってしまったのだ。

 そのまま立ち上がることもできず、結構長い時間そこにいたのだ。わたしが見つけていなかったら手遅れになっていたかもしれない。それ以前に、あれ以上バックしないで良かった・・・気づかずジイちゃんひいてしまうところだった・・・。

 笑い事じゃないんだ。ひとり暮らしのお年寄りはどんどん増えて行ってる。外で雪に埋もれてしまっても、気づいてくれる人がいないのだ。明日は我が身だ。今後結婚できる気がしないし、そうなると子供も持てないだろう。独り暮らしの年寄りになる確率は高いのだ。

 とりあえずは、埋まっても自力で脱出できるように足腰を鍛えねば。

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