よいこはまねしないでね その2
小学生の頃、わたしはぜんぜん女の子らしくなくて、がさつだった。おしとやかさの欠片もなかったのである。
ある時、わたしはいい遊び道具を見つけて興奮した。そこにはもう使い古しの、パチンコ玉大まで小さくなった消しゴムがあった。それを見てわたしはなんとも手頃でちょうどいい大きさだと思った。何にちょうどいい大きさかって、そりゃあアナタ、鼻の穴に入れるのにちょうどいい大きさよ。
子供の考えることってバカだよね。わたしも、小学生くらいのときはもう単細胞なモノの考え方してたみたいで、そこに穴があるから消しゴム突っ込んじゃったんだよね。
思った通り、その消しゴムは鼻の穴にぴったりはまって、幼いわたしはご満悦だ。こんなことでテンション上がるんだからホント単純よ。
でも「鼻に消しゴムを入れる遊び」ってのは、そこから発展しようがなく、それで終わりなんだよね。それで、冷静になって気がついた。
あれ、この消しゴム、どうやって出せばいいんだ?
ぴったりはまった消しゴムを取り出すべく、鼻の穴に指を入れる。すると消しゴムは奥に押し込まれる。そりゃそうだ。ぴったりはまった消しゴムと鼻の穴の間にすき間なんてあるわけないし、それをかき出すべく入れた指だって消しゴムと同じくらいの太さはあるわけだから、懐かしのロケットペンシルみたいに、押されて奥に行くだけだ。ムキになって指を動かすと、さらに消しゴムは奥に行ってしまい、痛みが走った。
これはマズイ。
鏡で鼻の奥を見ると、確かに白いかたまりはそこにいる。見えるところにありながら、思い通りにはならないのだ。どうしよう。自分でなんとかしなけりゃ、こんなこと、お母さんにバレたら怒られる・・・!
消しゴムが出てこないことより、カーチャンに怒られるほうが一大事である。どうしよう、どうしよう。どうしたらこのかたまりは出てくるのか。あせって指で押し込むので、さらに奥に奥にと入っていってしまう。さよなら消しゴム・・・って、いやそれどころじゃない。だんだん恐怖が大きくなってきて、この世の終わりみたいな心境になってきた。
どうして消しゴムなんて突っ込んでしまったんだろう。あんなことしなければこんな気持ちにならなかったのに・・・後悔先に立たずとはまさにこのことである。
わたしはなんてバカなんだろう・・・。きっとこのまま、奥に入った消しゴムとは一生のつき合いになるのだろうな。と思った瞬間鼻がむずむずし、でっかいクシャミが出た。そしてその勢いで消しゴムも飛び出てきた。なんともあっけない幕切れだ。
まとめると、鼻に消しゴム突っ込んで出てこなくなったけど、クシャミしたら出てきたってだけのことなんだけど、子供の頃って、小さなことでも大事件なので、あの時はホント、生きるか死ぬかくらいの心境にはなったよね。
こういう失敗があって、人は大人になっていくんだね・・・って、大人の階段としてはあまりカッコイイ失敗じゃないなコレは。恥ずかしい。
保護者のみなさん、子供の身の回りに口に入れやすい、あるいは鼻に入れやすいものがあった場合は隠してください。子供はなんでも口に入れるし、たまには鼻に入れちゃうかもしれないから。(わたしだけか)
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