ヴィンテージボロボロバッグ

 捨てようと思ってたのに、結局今も使ってるショルダーバッグがある。

 黒のナイロンで出来ていて、大きさも丁度良くて、軽くてポケットがいっぱいあって…とにかく便利なこのバッグを、最初わたしは通勤カバンとして使っていた。

 財布やお弁当、謎のポーチ(中身は察せよ)、ケータイ、ちょっとした書類、などなど入れて毎日使ってた、と言うか、他にバッグなんて持ってなくて、とっかえひっかえするという発想はわたしにはなかった。

 毎日使ってたし、安物だったから使い方も雑で、数年使ったらさすがに表地がボロボロになってしまい、通勤に使うにはちょっと恥ずかしくなった。

 新しいものを買って、このナイロンバッグは捨てよう、と思った。今度はいくつか買って使い回そうと。わたしは数年来の付き合いのバッグをゴミ袋に入れた。

 そうして街に新しいバッグを買いに出たのだが、あのバッグほど便利なバッグはどんなに探しても見つからないのだ。

 ファスナー付のポケットにはたまに必要になるものを入れていた。マジックテープで開閉できるほうのポケットには鍵とかガムとかすぐ出したいものを、その全面に付いてるフタなしポケットはケータイを入れておくのに重宝していた。両サイドのホルダーには手袋とペットボトルを入れた。肩掛けのベルトは太くて痛くなりにくい。物も結構たくさん入る。

 どこを探しても、ない。あんなに使い勝手のいいバッグは。

 結局「そこそこおしゃれだけどあまり便利ではないショルダーバッグ」を買って、疲れ果てて家に戻った。

 一度ゴミ袋に入れたあのショルダーバッグを外に出した。

 やっぱりこれはまだ捨てられない。

 その後は、その黒のショルダーバッグは通勤に使うことはなくなったものの、旅に出るときに使っている。旅の間は、わたしは格好も適当だからちょうどいいのだ。表地がボロボロになっていたって裏地はまだしっかりしていて穴が開く気配はないし、もうしばらく世話になるつもりだ。

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