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家を買う(9) 進むも辛し戻るも辛し

 わたしはこの中古リノベーションにリミットを決めていた。今住んでる賃貸の契約更新まで。1月の時点で残り7ヶ月しかなかった。リノベーションの工事期間(およそ2〜3か月)を差し引くともうあまりのんびりしていられない。

 もちろん、契約更新をして、物件探しの時間を確保することもてきたけど、更新したところで物件決まり次第すぐ出ちゃうんだから敷金の無駄になるし、何よりこの賃貸を一刻も早く出たかった。思い出してほしい。わたしが分譲マンションを考え始めたそもそもの発端は騒音だ。隣が夜中度々騒ぐので困っていた。

 騒音がひどくて夜眠れないので、睡眠時には耳栓を手放せない状態になった。毎日毎日耳栓を耳に突っ込むことは実は耳にとってあまりいいことではない。もちろん耳栓を毎日新しくするなんて不経済なことできないので水洗いできるものを選んで度々洗いながらローテーションしていく。それでもやっぱり不衛生なんだよね。

 そんなことを1年ほどやっていたわたしの耳は耳垢がたまりやすくなり、それをゴリゴリ耳掃除していたせいで荒れに荒れまくって、また耳垢が増えての悪循環。

 早く病院行けよって話なんだけど、行って治ったところでうるさい事は何も変わらないのでまた耳栓毎日突っ込まないといけない。つまり根本は何も解決していない。騒音に対して苦情を言ったところで管理会社は何もしてくれないし、騒音が止むことはないんだから。

 本当に恥ずかしいんだけど、この時期のわたしの耳ん中は垢だらけで、かゆみも激しかった。この状態でイライラし、家に帰れば騒音にイライラし、だから耳掃除をゴリゴリやってしまう。とても辛かった。

 早く引っ越して、ちゃんと病院で診てもらいたい。きっと先生に怒られるだろうな。でもしょうがない。心の準備だけしっかりしておこう。

 そんなわけで、いい物件に出会えることを切望して、中古の内見をいくつもした。もちろんその都度古路さんが見積もりをくれる。建物の価格はいくらか、リノベーションで想定される金額はいくらか、管理費修繕費もひっくるめて、月々の支払い金額はどのくらいになるか…。

 見積もりに記載されている数字はいつも数百万という単位。買う気持ちは確固たるものでも、やっぱり怖いよ。

 そして、自分を救うためのこの買い物も、また自分にダメージを与えてしまっていたらしい。ある日、朝目覚めてあくびをできなかった。超絶アゴが痛い。顎関節症か。その症状は何日か続き、まともに咀嚼ができなかった。それだけじゃない。首も痛いし胃も痛い。

 ああそうか。わたしは最近内見で見積もり渡される度に、あまりに大きな金額とニラメッコしていることにストレスを感じているんだ。

 まさにこの時期のわたしは不調のデパート状態だった。言わば「進むも辛し、戻るも辛し」状態。だけど、金額とのニラメッコで生じるストレスは買ってしまえば治まる。ならば突き進むしかないでしょう!

 そして、年が明けてしばらくして、わたしはついにその物件に出会うことになる。

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