寄り添うということ

最近、失敗してしまい、落ち込んでいたら、心理士の先輩が「話聞くよ」と言ってくれたので、泣きそうになりながら電話で愚痴らせてもらうことにした。(カウンセリングではありません。「仲間」と言っていただいたので、あくまでも仲間内の先輩−後輩のやりとりです)

そこで驚いたのが、言葉が出てこない。

先輩の「どうしたぁ?」という穏やかな問いかけに対しても「うーん…」としか答えられない。相手も優しく「うーん」と返してくれる。脳内は、水彩絵の具のようだった。青色や赤色、紫や黄色の絵の具をパレットに同時に出して混ざったような感じで「何色」と言い表せない。

私の困りごとも、さまざまな要因が絡まって言葉にできなくなってしまっていた。

5分、10分と無言の時間が過ぎてゆく。たまに先輩が「そうかぁ…」などと優しく声をかけてくれるのだけど、(失礼なのだけど)何も言えずにいた。ただ携帯を耳に当てて、黙ったまま部屋の中をぐるぐる回っているだけだった。先輩も何も言わずに待ってくれた。

相手もプロの心理士であるからか、不思議と無言の時間が苦痛ではなかった。むしろ、電話口の向こうで誰かが私の気持ちに寄り添ってくれている気配を感じ、不思議と心が落ち着いていった。たまに相手が呟く「そうかぁ」「うーん」という柔らかな口調が「焦らなくていいよ」と言ってくれているようで、落ち着いて頭を整理することができた。

多分、15分かそれ以上黙ったままだったのだけど、先輩が、たぶん「大変だったなぁ」とか「頑張ったなぁ」と呟いてくれたタイミングで「あのね…」と話し始めることができた。

これが私が初めて「寄り添ってもらう」という経験をした時だと思う。

電話での通話だったので相手の表情も姿も分からない。それでも、私が沈黙を続けている間、先輩が焦らずにのんびり待ってくれている姿を想像できた。優しい笑顔も、励ましも、気の利く一言も、何も必要なかった。ただ、自然体で「話せるようになるまで待つよ〜」という先輩の…(あえて言葉にするならば)「雰囲気」が私を孤独から救ってくれた。

そう、私は孤独だった。周囲には多くの人が集まるのだけど、常に孤独だった。今回の先輩との電話を通して「孤独だったんだ」と気づくことができたのも良かった。

とりとめのない文章になってしまったのですが、20、30分にわたる電話でのやりとりが、ずっと私の心の中に残っていて、どうしても文章にしたかったのです。私にとって、この20、30分が「寄り添う」ということを学べた初めての時間でした。