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病気のとき聴いた音楽

ちょうど昨年の今頃、コロナに感染した。熱が続いていた1週間ほどの間にどうやって辿り着いたのかはもはやわからないけれど、私は耳元でJohann JohannssonやÓlafur Arnaldsを繰り返していた。知らないわけではなかったがそんなにヘビーに聴いている音楽ではなかった。

静かな、思慮深い森の中にいるような。あるいは、ひんやりした朝の空気に1人で立って、遠くから届く音を拾うような。湖の上に立ち止まって、鹿が歩いてくるのを待っているような。
なかでも、Johann Johannssonの「肩に止まったスズメ」は妙に心が平穏になった。

そういえば熱があったときに眠りと覚醒を行き来しながら、私はあるイメージを何度も繰り返していた。それは、深海の闇に沈んでいくイメージ。1人、真っ暗闇を、静かにゆっくりと落ちていく。周囲から重みを感じる。底はない。どこにもたどり着かない。ずっと落ちるにつれ、だんだんと肺が圧迫されて苦しさが増す。ぎゅーっと、息ができなくなる…

振り返ると、私が寝ていたのはどう考えても夏の厳しい太陽光線の入る川崎の小さな部屋だった。でも全く違う場所にいた気がする。

そんな日が続いた翌朝、私は無性にJennifer Hudsonが聴きたくなった。
Move!Move!
Move right out of my life!
熱は下がっていた。生きていた。

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