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A子はフォトジェニック

A子から手紙が届く。

最近のA子からの手紙には、スパイシーなお香の匂い袋が入っている。紫陽花柄の和紙の便箋。風流である。

和紙の上にはいつものように文字がコロコロと並んでいる。

元気そうだ。
それが何よりだ。

A子は読書が好きだ。手紙では最近読んだ本の、「ロマンスあふれる相対性理論」について熱く語られていた。しかも、読み途中、読後と時間を追った実況中継だった。
中継を聞いているとその本が読みたくなる。
そうだ、このひととは趣味が合うところ、合わないところがあるのだ。けれど、趣味の範囲外の内容であっても気になってしまうような、読書への熱がある。

A子は私が大学で知り合った友人である。
大学1年の頃。あるゼミのクラスにA子はいた。今思えば、なんでまた、私なぞがいたのかわからない法学部の中の、今思えばなぜA子なぞがいたのかもわからない、ちゃんとしたゼミだった。元裁判官の先生の、法学部にふさわしい、後にちゃんと法曹界に入っていった人もいた、ちゃんとした法学部のゼミだった。
いまだに交流のある私の大学時代の数少ない友人はほぼそのゼミにいた。
そのゼミの仲間と仲良くなったのは、私がある事件を起こしたからかもしれない、と思う。私が起こしたのは人によってはかなりめんどくさがられるような旅行中の事件だった。
でも皆優しかった。
そんなクラスの中にいたA子は当時ヘアアレンジが上手で、クラスの何人かに施してくれた。その問題の旅行中、ヘアワックスを塗って、コームで逆毛を立ててフィッシュボーンというヘアアレンジをしてくれた。


A子と久しぶりに会った。
元気なのが何より、とよく言うけれど、私はとりわけA子が元気なのが嬉しい。

最近仲良くなった若い友人がいて、その子に「A子さんはノリが大学生ですよね」と言われたのが「ショックだよねー」なんて言うのでつい、大声で返してしまった。「ウソだろ!いまさら?!」

A子は何を隠そう、永遠の女子高生である。
いつだったか、高校の文化祭の撮影に行った話をしたら「先に教えてよ。私も行ったのに」と言われた。こちとら自分が耐えた学校を思い出してちょっとしんどくなったというのに…
学生時代、楽しかったのかなぁ。うらやましい。私は学校ダメだったなぁ。

A子は写真を大事にしている。
でもたまに断捨離した!と報告が来たりする。
沖縄に行って女子大生のグループと大騒ぎ(してるかどうか実際見たことはないけれど、たぶんしてる)しながら旅をする人だ。
たぶん断捨離しても、またそのうち写真は増えるんじゃないかと思う。

A子はたまに名言を発する。
私はふと現れるその名言に気づいて、書き留めることができることもあるけれど、全てには気づけていない。もったいないことだ。

以下は私のメモである。

あぞう
うんぞう
A子ぞう

何の意味があるのか、もう覚えていない。

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