21歳女、特撮にハマる

特撮にハマった。約10年ぶりに。

きっかけはとある俳優だった。

私には最近好きな俳優がいる。
それは結木滉星(敬称略)という俳優である。
彼は『ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」』で初代赤葦京治を演じた、今年30歳になる俳優だ。元々原作漫画が好きな私は演劇「ハイキュー!!」の存在を知っていたし、他の2.5次元にあまり興味はないものの、この舞台は結構好きだった。当時は木村達成の演じる影山飛雄が好きだった。初めて彼の影山飛雄を見た時のあの衝撃は今でも忘れられない。髪型や目力、体型。どれを取っても本当に漫画とアニメから飛び出してきたような影山飛雄だった。
とまあ影山飛雄の話は一旦置いといて、結木滉星のことは「ああ、初代赤葦の俳優さんね」といった認識だった。彼もまた、再現度が高かった。そういうぼんやりとしたイメージ。

そして今年2月に公開された『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』。イギリスに留学中も『もしかして私がイギリスにいる間に公開してしまうんじゃ……そんなの絶対イヤ!特典は全部貰いたい!』と気が気でなかったくらい楽しみにしていた映画がついに公開。私は予定が合わず、初日ではなく公開2日目に観に行った。そして、ハイキューにハマり、二次創作を読み漁り、泣いて笑ったあの日々を思い出し、現ジャンル沼から抜け出してハイキュー沼へいそいそと出戻りしている最中だった。映画を観た後は家に帰って即映画の続きの巻から読み返し、あの頃と同じようにpixivの海を彷徨い、ハイキューのあらゆるコンテンツを、懐かしさを胸に抱きながらひとつひとつ元の道を辿るかのようにしていた時、ふと演劇ハイキューのことを思い出した。そうして「あ、木村達也の影山飛雄すごかったよなぁ」と断片的に思いだした私は、もう一度演劇ハイキューを見返したのである。そして当時は完全にノーマークだった結木滉星演じる赤葦京治に堕ちた。

好みのタイプは歳を重ねるにつれて変わるものだ。そう、昔は目がパッチリとした人が好きだった。そして今は昔はよくわからなかった塩顔の良さがわかってきたところ。ふと見返した彼の演じる赤葦はまさに赤葦そのもの。『ゴミ捨て場の決戦』で発した「ごめんね」の4文字でありとあらゆるSNSを湧かせた、あの赤葦そのものである。眉毛、体格、唇、顰めっ面。「木兎さん」と呼ぶ姿も全部が赤葦京治で、私は沼に引き摺り込まれた。
『なんでこの俳優に昔は気づかなかったんだ!』と悔しく思うと同時に、『出演作をできる限り全て見よう』と思い立つまでに時間は掛からなかった。元々のオタク気質故か、私は好きになったらとことん調べ上げるタイプである。

そこからはもう早かった。まず、出演作を加入しているサブスクリプションで片っ端から検索して観る。『カカフカカ』の長谷くんや『PICU』のゲスト出演(1話だけ)、『僕だけが17歳の世界で』の伊織などを通して結木滉星成分をひたすら浴びた。リアルタイムでは出来ない、役柄毎に雰囲気が変わるのを短期間で観るのは楽しかった。こうして俳優にハマったのは、高校生の時にハマった林遣都以来だった。そうして出演作を見返していると、こうなったらもう覚悟を決めて観るしかない大作がある。そう、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』だ。

少しだけ身の上話をさせてほしい。
私には5歳離れた弟がいる。男兄弟がいる女として避けては通れないもの、それは特撮だ。幼稚園から小学校高学年までの間、ずっとスーパー戦隊ヒーローものや仮面ライダーを観て育ってきた。平日は起きない癖に、土日はやけに早起きをして母を困らせるタイプの子供だった。日曜日には7時に起きて、布団の上でムシキングを観てから戦隊ヒーロー、仮面ライダーの順に観るのが毎週のルーティーンだった。
特に思い出に残っているのは、仮面ライダーオーズである。あれは弟と私のみならず、両親含め全員が狂ったように特撮にハマっていた時期でもある。同級生の女子に中々特撮を観ている子はおらず、クラスの男子とずっとオーズの話をしていた。弟が買ってもらっていた光るパジャマが欲しかったし、ゴセイジャーの変身オモチャが欲しかった。西松屋で小さいバージョン(1000円以内で買える公式のパチモンみたいなものだ)を買ってもらって肌身離さず持っていたこともある。
私はもう成人済みで、大人の身だ。息子よりもハマっていた父と母を間近で見てきた私にとって、特撮の沼は怖かった。朝4時に家を出て、片田舎の家から一番近いスーパーに並び、オーメダルを買っていた父と母の姿は、成人した今でも記憶に残っている。そう、そんな風に昔特撮が好きだった自分は、大人になってから特撮にハマる怖さを知っていた。
だが、好きな俳優を追うにはしょうがない。就活なんて関係ない。『思い立ったらすぐ行動』が長所の私は『ええいままよ!』とU-NEXTに登録をし(NetflixとAmazonプライムにはなかったので)、全51話ある『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(以下ルパパト)を観始めた。


結論、ハマった。


まず、なんだコレは。私の知っている戦隊シリーズではない。
レンジャーは普通一作品に1組(追加レンジャーを除いて)だが、この作品では2組出てくる。絶対的ヒーローの『警察』であるパトレンジャーと、それと敵対する正義のアウトロー『快盗』であるルパンレンジャー。普通ならばヴィラン側で描かれるであろうルパンというモチーフは今回VSとはなっているものの、ヒーロー側の存在である。まずその斬新な対立する2組の設定が面白い・・・・・・と、目当ては俳優・結木滉星だったはずなのに、普通に作品の設定に魅了された。
市民と正義を守るために戦う『パトレンジャー』と、復讐心を抱きながら自らの願いを叶えるために戦う『ルパンレンジャー』。この2組は真逆の存在であり、基本共闘することはない。パトレンジャーVSルパンレンジャーVSヴィラン(ギャングラー)である。

喧嘩したまま兄を失った不甲斐なさ、そして『兄を取り戻す』という信念に心を燃やし、自分達の幸せのために健闘するルパンレッドの夜野魁利。熱血漢で、人々の幸せと平和のためなら自分の身体は二の次、何よりも平和を守るために戦うパトレン1号の朝加圭一郎。


かっこよすぎるだろ


最初は『一体どこで千切られたんだ』といいたくなるようなパッツンの前髪と(どうやら中の人が自分で切った結果こうなってしまったらしい)、いつも以上に眉毛の凛々しい結木滉星の姿を見て、少しこれまでの戦隊ヒーローらしからぬビジュアルに最初は驚いたものだ。

というのも、特撮=若手俳優の登竜門というイメージが強いからだった。実際にウチの母親が『この子カッコいいね』と当時の千葉雄大や福士蒼汰を指してよく言っていた。その印象が強いからか、ルパンレッドはシュッとしているのに、パトレン1号は昭和味が凄いぞ・・・・・と思ったものである。
ついさっき観終わった『僕だけが17歳の世界で』でモテモテの高校時代から、少し影のあるクールな眼鏡イケメンの医者を演じていた人と同じとは信じがたい。それくらい、朝加圭一郎は1話から暑苦しい男だった。

だが、この朝加圭一郎という男はかっこよすぎるのだ。

まずこの男、めちゃくちゃ真っ直ぐである。何よりも市民の平和、安全を守るために生きている。そんな男だ。そしてそんな暑苦しさとは逆に、子供好きな面もある。子供には大抵怖がられているが、迷子の子供のヘアゴムを見つけるために汗だくになるまで探し回ったり、子供が楽しみにしていた遠足が無事に行われるよう命をかけ、瀕死の状態になるまで敵と戦ったり、とにかく覚悟が凄い。この覚悟の決め方には流石のジョルノ・ジョバァーナも驚くだろう。

幼い頃は、斜に構えたような、クールで少し抜けているところのある二枚目タイプのキャラが好きだった。昔の私であれば、ルパンブルーを好きになっていただろう(エアロビ回は凄かった)。実際仮面ライダーオーズでは主人公よりもアンクが好きだったし、仮面ライダーフォーゼでは弦太朗よりも賢吾と流星が好きだった。
だが、俳優贔屓抜きにして、朝加圭一郎という男はかっこよすぎる。クールとは真逆の熱血漢なのに、だ。良いところをあげ出したらキリがない。リアルタイムで放送中に『朝加圭一郎ポイント』なるものが話題になっていたのも理解できる。
国際警察は給料がいい(つかさ談)のに、なぜか1人だけ6畳間の和室(風呂トイレ共同)の寮に住んでいる。そして趣味はレコード(なぜ)。綺麗な女性にアピールをされても気づかず、仕舞いには「自分は不器用だからすまない」と言ってガチゴチに固まってしまう。でも映画撮影のシーンでは女装姿で棒読みを披露し、最終的に出来上がったものを観て「なかなかいいんじゃないか?」とドヤ顔をするようなお茶目な部分もある。

そんな、そんなのって・・・・・




夫、いや、もはや父親になってほしい





いや、それはちょっと嫌かもしれない。

朝加家に生まれたら、思春期には「お父さんクサイからお父さんの服と一緒に洗濯機回さないで!」とか言う自信しかない。ダラダラとテレビを観ていたら、本人はコミュニケーションのつもりで毎回「課題は終わったのか?」とか聞いてきそうで、なんかちょっとイヤだ。でも幼少期、母親が仕事で朝早く出勤する時には、不器用に唸りながらも髪の毛を縛ってくれるし、左右の高さが微妙に違うツインテールも私は好きだった。登校して、クラスの男の子に「〇〇ちゃん髪の毛おかしいー!」って笑われても「お父さんがやってくれたの。いいでしょ」ってドヤ顔をするのだ。鬼ごっこもかくれんぼも全力でやってくれるし、ガチャガチャは目当てのものが出るまで「母さんには内緒だぞ」って言いながら回してくれるし、帰り道にはコンビニでソフトクリームを買ってくれる。
忙しくて中々学校行事にきてくれないけど、どうにか仕事の休みをとってきてくれた運動会。父兄参加リレーで“ガチ”の走りを見せてゴールテープを一番に切る。クラスの子の「〇〇ちゃんのパパかっこいー!」という言葉に鼻高々に「でしょー」と言いたい。

そんな圭一郎パパが大好きだ。






まあ、そもそも圭一郎パパなど存在しないのだが。(コワ……)

何やら後半は『存在しない記憶』の話ばかりしている異常な記事になってしまったが、とにかくルパパトは最高である。大人になり、忘れかけていたあの頃の童心や、荒れ腐った心に生きる上で大切なことを思い出させてくれるのだ。完全な思いつきで書き殴った文章なので、特撮の魅力など全く伝えきれていないが、もしもルパパトを観たことがない人がいたら観てほしい。最高なのは保証する。


そして、結木滉星さん。生きていてくれて、俳優をやっていてくれて本当にありがとう。
これからもずっと応援しています。


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