寓話的マヌルネコとの対話⑵

マヌルネコは毛繕いを始めた。
普通の猫みたいに前脚で顔を洗っている。

「わしも元は人間だったんじゃ。
死後、この種類の猫になぜか入り込んだ。
その個体が死ぬと次の個体へ。
大体は子供の個体に移ってきた。
この個体には8年くらいかのう。
父親がこの国に移送されたので、わしもここへ来た」
「じゃあ、前はどこの国に?」
「唐と呼ばれる国じゃ」
「唐?! それってすごい前ですよ。えーっと、ざっと1200年くらい」
「そうか」
「人間の時はどんな仕事をしてたんです?」
「役人じゃよ。難しい試験を受けて合格した。
まあ、わしのことはいい。お前の悩みはなんだ?」
「なんで僕が悩んでると思うんですか?」

マヌルネコは高らかに笑った。
いや、笑い声が頭に入ってきただけだが。
毛繕いは終わったのか、今は香箱座りの体勢で僕を見つめている。

「そんなしけた顔をした男が、雨の平日に動物園に来ている。問題があるに決まっとるわ」

「うっ。さらっとヒドいこと言いますね。
まあ、でもそのとおりですよ。彼女と上手くいってないんです。このままだと自然消滅だと思うけど、どうしてよいか分からなくて」

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