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果報は、寝て待ってもこないかもしれないけれど

新しい会社に入ってしばらく経ったが、ほぼ毎日注意されている。
私のやったことではないのだが……という、理不尽な内容もあるけれど、ほとんどは私の注意力散漫な性格によるもので、言い訳できない分、落ち込む。

さらにいつも「遅い」と言われる。
慣れるまで私は実際に遅い。
自分に自信がないせいで、必要以上に萎縮してしまうせいだ。

三回注意され、さすがにマズいと思って「何かコツはあるか」先輩に訊いてみたところ、最初に教わったのと違う方法を教えてくれた。

オイオイ。
それなら最初からそれを教えてくれよ。教える側にだって問題があるじゃないか。だったらせめてもう少しキツくない言い方で注意してくれよ。
そんな気持ちを押し殺しながら、笑顔で「ありがとうございます」とお礼を言った。

毎日、「仕事に行きたくないなぁ」と思う。
正直辛い。
自分のことを仕事が出来ないやつだなんて思ったことがなかった。
今までは一人で完結する仕事だったので、失敗しても自分でリカバリーすれば良かったからだ。

「雑で仕事が遅い」なんて、チームで仕事をすることになって初めて分かった。
この歳になって自分の能力を知るなんて、まさに晴天の霹靂だ。

今までの職場は、なんだかんだみんな優しくて、甘やかされてのびのびと仕事をさせて貰ってきたのだった。
だからこそ私はやる気もりもりで、率先して働こうと思えたのだ。
やる気があって自分から面倒なことを買って出るから、みんなも機嫌良かった。たくさん雑談もあった。仮に注意されても優しさがあった。
面倒だな、と思う日はあっても、会社に行くのが辛いことはなかった。

もう戻らない日々を懐かしんだって、現状は何も変わらない。
人前でみっともなく泣いて同情を買ったって、そんなのなんの解決にもならない。
ボロボロメンタルで家に帰って、一人泣きながら夕食を作った。
悲しい悔しい情けないの気持ち、そして泣いている自分を馬鹿みたいと思う気持ち、全部がぐるぐる回って、乱高下する。

それでも出来上がった夕食を、私は残さず平らげた。

大丈夫。
じゃないかもしれない。辞めたいってずっと思っている。
でも、とりあえずやれることはやってみなくちゃいけない。雑な性格は直らないけれど、せめて注意された失敗を繰り返さないようにするしかない。
地道に一歩一歩進むしかないのだ。

時々甘いものを食べて。
好きな歌を聴いて。
優しい物語を読んで。
美しい景色を見て。
身近な人と話をして。
ささやかなことで自分を癒やしながら、生きるしかないのだ。

果報は寝て待てというけれど、寝てる内にしんじゃうことだってある。
じゃあ自分で少しでも、優しい生活をしなければ。
そう言い聞かせる。

「しあわせは食べて寝て待て」っていう漫画がとても沁みた日だった。



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