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タイの少数民族[ラフ族]の村|旅行記

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チェンライ市街からフアイメーサイ

2022年の年越しはタイ北部の街チェンライで迎えた。
元旦の朝のチェンライは薄手の上着が一枚要るくらいに肌寒く、道路には新年を祝うパレードに使うらしい精妙な木彫りの山車が並んでいた。一年の始まりらしく、すきっとした晴天の朝である。

一応今日の予定は"タイの少数民族《ラフ族》の村にホームステイ"である。
ラフ族とは、元はチベットに住んでいた山岳民族で、現在タイには約10万人程が住んでいる。この数字が少数民族としては多い方なのか、少ないのかはよく分からない。

チェンライの山の頂上にあるラフ族の村でホームステイができると聞き、年末に電話予約をしていたが、私の拙いタイ語ではこちらの意図が伝わっているかも怪しかったし、村への行き方もよく分からなかった。

とりあえずラフ族の村がある山の麓の町である《フアイメーサイ》までタクシー行ってみようということになる。そこでラフ族の村行きの何らかの足を探せばいい、と私たちは気楽に構えていた。
この行き当たりばったりの適当な感じは、私たちの旅全般に通じるものである。痛い目を見ることもあるが、大体何とかなっている。少なくとも今のところは。

睡蓮鉢から水を飲むネコチャン

チェンライ市街から車で約30分、辿り着いた町《フアイメーサイ》は、町というよりは集落と呼ぶべき大変長閑なところであった。

食堂なのか雑貨店なのかよく分からない店で、ラフ族の村に行きたい、と聞いてみる。彼らはたまたま通りかかったトラックを呼び止め、200バーツでラフ族の村まで送って貰えることになった。タイの人々の親切にはいつも本当に助けられている。コップンカ。

荷台に私たちを乗せて、トラックはオフロードの急勾配をガタガタ登る。振り落とされまいと踏ん張り続ける私の太腿の筋肉は、伸び切ったゴムのようになってしまい、村に到着するなり派手にコケて村民から笑われるという一幕があったのだが、残念ながらそのシーンは撮れていなかった。

ラフ族の村

ラフ族の村

空の青いろと乾いた地面のオレンジ。ラフ族の村を思い出すとき、まずこの鮮やかな色の対比が頭に浮かぶ。赤茶けた細かい土は、踏むと靴の下でサラサラ崩れた。山の上の透き通った気層が何もかも乾かしてしまう、そんな空気の場所だった。

ラフ族の村は、峻険な山の斜面を切り開いて作られた小さな村だ。五分もあれば村を一周できてしまう。電気やガスは通っておらず、家の前には小さなソーラーパネルが付いているきり。主な燃料は薪で、家の中で火を起こして料理をする。

家の中を見せていただいた
ラフ族のお台所|鍋の種類が多くて驚いた

ラフ族は独自の言語である《ラフ語》を話し、年配者にはタイ語を話せない者もいる。実際、ホームステイをさせて頂いた家のオーナーの母親はタイ語を話さず、チェンライの街にも行ったことが無いらしい。彼らはこの村の中で完結しているのだ。それが一体どういう人生なのか、偶々この村を訪れ、そして去っていく一時の旅行者である私には、判断することはできない事柄だろう。

余談だが、村の子供が《鬼滅の刃》の服を着て歩いていた。ラフ族の村でも流行ってるキメツ、やはり凄い。

里山の風景

村の下には里山が広がっており、ここの景色はまったく素晴らしかった。
三重の山の稜線が見事な設計、ライティングも最高の演出。夕日に変わろうとする柔らかな午後の光が、この景色を特別に輝かせていた。

旅をしていると時々こういう奇跡的な景色に出会うことがある。そういった景色は網膜を通り越して心の奥に焦点を結び、時間が経った後も鮮やかに残り続ける。

この旅の中で《プーチーファー》《ドイパータン》といった、タイの山々の素晴らしい眺望を目にしたが、一番印象に残ったのはこの里山の風景だった。ここには何か心遠くなるような、特別なものがあった。それはこの美しい景色と、奇妙にしん、とした山の静けさのせいかもしれない。

動画編集では映像に合わせてBGMを挿入することが多いのだが、虫の声と柔草のゆすれる音を聴いてほしくて、この場所の音はそのまま使っている。それはバンコクの喧騒に疲れた私の耳を優しく慰撫してくれた。

電気の無い夜

村に帰るとオーナーの奥さんが晩御飯を作ってくれていた。ラフ族の料理は本当に美味しく、毎食楽しみになるほどだった。まず味付けが非常にシンプルで薄味。菜の花の炒め物なんかはそのまま日本の味である。まさかラフ族の村で実家の料理の味を思い出すとは思わなかった。

暗くなる前にシャワーを借りる。服を脱いだりするのが面倒だったので、頭だけ洗った(ガスが無いのでもちろんお湯なんて出ない)。タオルを持って来ていなかったのでTシャツで髪を拭く。元々が大雑把というか、まぁいいか、で流してしまう性格なので、こういうのはあまり気にならない。

バンブーハウス|一泊100バーツ(食事代は別)

いよいよ暗くなると、ロウソクの灯りだけが頼りである。本を読もうとしたが、ロウソクの灯りでは読みづらくてやめてしまった。そうするともう、本当にすることが無い。携帯の電波だってここには届かないのだ。仕方がないので寝ることにする。
まぁ一年のうち一日くらい、電気の無い夜があったっていいじゃないか。私たちは7時前に就寝した。思ったほど、夜は寒くなかった。

部屋のバルコニー

ラフ族の犬たち

ラフ族の村にはとにかく犬が多かった。ラフ族にとって犬は《豊作をもたらす縁起の良い動物》らしいので、そのせいかもしれない。村の面積に対して犬の人口密度が高いので、そこかしこで縄張り争いが起きていた。

彼らは村人に可愛がられているらしく、見知らぬ日本人に対しても非常に友好的であった。中でも滞在中ずっと私たちに付いて回った黒い犬を《おやびん》、一回り小さな犬を《子分》と名付け、彼らとはとても仲良くなった。

おやびんと私

翌朝、雲海が見れると聞いていたので、村の外の小高い丘まで見に行くことにする。村の中腹からピンと耳を立ててこちらを見ているのは《おやびん》と《子分》。手を上げて挨拶すると嬉しそうに駆けて来た。どうやら朝の散歩についてくる気らしく、意気揚々と先導し始めた。

村の入り口を見張っている野良犬の《ギャング団》とちょっとした小競り合いがあったり、おやびんと子分の仲の良さが垣間見える一幕があったり、動画ではその様子を丁寧に映しているので良かったら見てみてほしい。そこにはまさしく“ラフ族わんわん物語”と言うべきドラマがあった。

朝靄に包まれるチェンライの山々

おやびんと子分は広い山中を自由に駆け回りながらも、定期的に私たちの様子を見に戻ってくる。山の写真を撮って、彼らと遊んでから一緒に村に帰った。飼い犬でもない犬とこんなに気持ちが通じ合うことは滅多にない。本当に可愛かった。

今でもよく、相方とあの村の犬たちの話をする。今日も彼らは仲良く元気にラフ族の村を駆け回っていることだろう。そんな場所がこの世界のどこかにあると思うと、それだけで世界がちょっと素敵になる。
旅をするとは、そんな場所が世界中に少しずつ増えていくことではないだろうか。ふと、そう思った。

朝日に照らされるラフ族の村

Youtube動画

動画でも美しいラフ族の村の景色をぜひご覧ください。見所は動画中盤の里山の景色と、早朝のわんわん物語です。

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