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途中で目が覚めてしまった

不可解な事故が起きたのは夕方に差し掛かった蒸し暑い日。
路面電車のある町に、小学生の男の子が二人。それまでおしゃべりをしながら元気に歩いていたと思っていたのに、一人が突然ボーッとしたと思ったら電車に飛び込んだ。
これは自殺で処理されたが、不可解なのはこの後も同様の事故が夕方に限って続いたこと。電車に飛び込むのは小さな子どもだと言うこと。
警察は必死に原因究明に努めたが結局分からなかった。
次第にこの通りを夕方に歩く子どもの姿は無くなっていった。

ある朝、母親に連れられて一人の子どもが大きな荷物を抱えて電車から降りようとしていた。
「みーちゃん、次の駅で降りるよ。おばあちゃん待ってるからね」
そう声を掛けられたのは5歳の女の子。
さやかは娘のミカの幼稚園が夏休みになったので母に預けるため、早朝に電車に乗ってきた。

「ママは夜には帰るから、おばあちゃんの言う事よく聞くのよ」
「うん、分かってる。ママお仕事頑張ってね」

電車を降り、母に駅に着いたと電話をしてから出発しようとした時、ミカが突然フラフラと反対の線路に向かって歩き出した。
「みーちゃん、そっちじゃないよ!」
さやかが手をギュッと握りミカを引っ張った。次の瞬間、電車が二人の前を汽笛を鳴らしながら過ぎ去って行った。
さやかはミカを抱きしめ震えながら叱りつけた。
「みーちゃんわかんない、覚えてないもん。覚えてないもん」
泣きじゃくる娘に、さやかはただ抱きしめるしか出来なかった。

大通りを抜け、電気屋を曲がると細い道の先の実家前に母が見えた。
「おばあちゃーんっ!」
ミカがさやかの手をするりと解き、走って行く。
「みーちゃん、よく来たねぇ。あら?みーちゃん泣いてたの?ママと離れたくないのかい?」
「違うの。みーちゃん怒られたの。電車にぶつかりそうになったの」
さやかの母親はそれを聞いてみるみるうちに青ざめていった。
「さやか、ダメだこの町は。ミカを連れて帰りなさい。そこの駅には行っちゃダメだ。隣町の新幹線の駅までタクシー使いなさい」
「ちょ、ちょっとお母さん、どうしちゃったのよ。来たばっかりよ。あたしも仕事があるからミカを預かって貰わないと困るのよ」
何故かダメだ、帰れの一点張りの母をどうにか説得しなければならない。
まずは説明をして欲しいと実家に上がり込むと、最近起きたという事故を説明してくれた。
今までは夕方しか起きていない事故だから、ミカを夕方に大通りに連れて行かなければ大丈夫だと思ったと。
しかし、さっき朝にも関わらずミカが電車に飛び込もうとしたことで、もうどの時間でもダメだと思ったと。
「何でそんな大事な事言ってくれなかったの!」
さやかは顔を真っ赤にして大声を出した。
こうなったら実家に預ける所では無い。こんな危険な所、すぐにでも娘を連れて離れなければ。

「お母さんごめんね!」
そう言って呼んだタクシーに飛び乗り隣町の駅までと伝えた。
事故のあった駅をタクシーの窓から目にし、娘の手をギュッと握って後にした。
つもりだった。
タクシーに無線が入った。
「あー、お客さん、この道ダメだわ。この先落石で暫く通れないって。戻るから電車で行って」
「そんな!運転手さんだったらあの駅の事分かるでしょ、子どもがいるの」
「大丈夫だよ。まだほら昼前だから」
「朝あの駅で娘がフラフラと電車に近づいて行ったのよ」
「えー?でも夕方以外は聞いたことないよ。ちょっとふらついただけでしょう。それにお母さんちゃんと手を繋いでるなら大丈夫だよ。ねー、お嬢ちゃん」
そう言うと運転手はUターンし、あの駅へ戻った。
さやかはドキドキしながら戻ると、急いで駅の中へ入った。
電車賃を出すため、ミカにママの洋服を離さないように言い、財布から小銭を出していたらミカが何かを指しながら言った。
「ママ、何か光ってるよ」
「え?何?」
「あそこ。何か光ってる」
「どこ?」
さやかがミカの目線までしゃがみ込み指差す方を見た。
確かに光ってる。近くのビルの外階段の踊り場。よく見るとその光は規則正しくチカチカとしていた。
ふと隣を見ると、ミカがいない。
「ミカ?ミカ!」
さやかは辺りを見渡したがミカの姿も無ければ返事もない。
急いで駅の外に飛び出し、線路を見た。
ミカがフラフラと線路へ向かって歩いている。
その先に丁度電車が走って来ている。
「ミカ!ダメ!そっちへ行ってはダメ!!誰かその子を止めて!お願い!!誰かーーーっ!」
さやかの声は誰にも届かず、眼の前をミカが飛んだ。

数日後、さやかの元に女性の刑事が訪れた。
やつれた姿で玄関に現れたさやかは、か細い声で言った。
「警察には全て話しています。もうお話することはありません」
「お母さん、事故当時、何か見ませんでしたか?」
女性の刑事に言われてさやかはふと顔を上げた。
「何か・・・いえ、思い出せません」
「調書には切符を買っている間にミカちゃんがいなくなったとありますが」
「覚えてません」
女性の刑事はため息と共に何か思い出したらと名刺を置いて行った。

さやかは部屋に戻り水道から水を一杯飲もうとした時、ガラスのコップがキラッと光った。
はっと思い出した。
(そうだ、光を見た!ミカが光ってるよって・・・それで、どうしたんだっけ・・・)



夢です。ここで目が覚めてしまったため、数日経っても続きが見れません。
誰か続きを見るか、続きを考えたら教えてください。気になってしょうがないんです。私が。

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