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【創作】絵本用ストーリー『だから星は回ってる』

子どもたちによみきかせをしていた時期に思いついたお話です。
漫画にするには難しかったので、絵本形式のテキスト(ちょっとだけラフ絵もあります)でお見せすることにしました。少しでもお楽しみいただけたら幸いです。


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「だからほしはまわってる」 作:岩泉舞
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あるひ、よにんのせいとが、こうちょうしつに よばれました。

よばれたのは、
はるみさん、
なつきくん、
あきおくん、
ふゆこさん。

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こうちょうしつには こうちょうせんせいの
丸井(まるい)せんせいがいました。
いつもはやさしい、まんまるなおかおに
きびしいひょうじょうが うかんでいます。

よにんはいやなよかんがしました。

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「みなさんのことで たいへんめいわくしているという
こえが とどいています」
「ああ、やっぱり」
ふゆこさんはちいさなこえでいいました。
「なにが、やっぱりなのですか?」
「あ、あのう。それはわたしが、まわりを、さむくするから…」

「そうですね。あなたがゆきを ふらせるせいで
みんなこごえるおもいを しているんです。
あさがおも そだたないし そとにあそびにもいけない
だいめいわくです」

ふゆこさんはしょんぼりと うつむいてしまいました。

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「でもせんせい、それがふゆこの しごとだから」
なつきくんがくちをはさみます。
すると、せんせいはなつきくんにも きびしいめをむけました。

「なつきくん、あなたはあなたで、まわりをあつくしすぎです」
「えっ、でもあついのは いいことでしょ」
なつきくんはびっくりして いいかえしました。
「あつくないと プールあそびも おもしろくないよ」

「げんどというものが あります。
あつすぎるせいで ぐあいがわるくなったり ねむれないひとが
いるということを かんがえたことがありますか?」

なつきくんも、しょんぼりとうつむいてしまいました。

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「せんせい、あまりふたりを しからないで」
「そうです、ふたりはちょっと やりすぎただけです」
はるみさんと あきおくんが ふたりをかばいます。

「じぶんたちは あつすぎもせず さむすぎもしないから
だいじょうぶだと おもっているようですが
あなたたちにも くじょうはきているのですよ」
せんせいにいわれて、はるみさんと あきおくんはびっくり。

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「えっ、はるをきらいなひとなんて いるの?
ほかぽか あたたかくて きれいなおはなも たくさんさくのに」

「あたたかさに さそわれて むしも うじゃうじゃ でてくるでしょ。
それに おはながとばす かふんで くしゃみやなみだが とまらず
こまっているひとが おおぜいいるんですよ」

はるみさんも うつむいてしまいました。

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「あきには なんのもんだいも ないとおもうけどな。
あつくも、さむくもないし おいしいたべものも いっぱいだし」

「おいもや くり かぼちゃ。どれもふとってしまうもの ばかりですよね?」
「それは たべすぎるひとが わるいんじゃ…」
あきおくんは いいかえしましたが せんせいは つづけていいました。

「それに、たえまなくおちる かれは!
だれがそうじをすると おもっているのですか?
みているだけでも ものがなしく きがめいると くじょうがきています」

あきおくんも だまってうつむいてしまいました。

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「みなさん、わかりましたね?
みなさんは みんなにめいわくを かけているんです」
まるいせんせいは ぴょんとたちあがり そのばでくるくる おどりだしました。

「どうしてふつうに しないのですか?
どうして きょくたんなことを するのですか?
どうして わたしのように
まんまるで いられないのですか?」

まるいせんせいは せすじをぴんとのばしたしせいで
かんぺきなえんを えがきながら
かなしげになきながら くるくるまわりました。

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「みなさんのような こどもは このがっこうには いりません。
めいわくをかけるこどもは このがっこうには いりません」

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よにんのこどもは せんせいの かれいなかいてんに
ぽーんと はじきとばされ
がっこうをおいだされて しまいました。

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『まるいほしのがっこう』のそとは
なにもない まっくらなくうかんでした。

よにんはおもわず てをとりあい
なにもみえないせかいで わになりました。

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「わたしは」
ふゆこさんが ちいさなちいさなこえで
となりのはるみさんにいいました。
「むしが すきだよ」
はるみさんは ふゆこさんのてを ぎゅっとにぎりかえしました。

「あついひに のむラムネが いちばんおいしいとおもう」
はるみさんは、となりのなつきくんにいいました。
なつきくんは いつものえがおを とりもどしました。

「おれ、しってるぜ。
おちばは、じめんの ちいさないきものの えいようになるんだ」
あきおくんは おおきくうなずきました。

「ゆきのしたで つちもいきものも ゆっくりやすむんだ。
はるにまた がんばれるように」
あきおくんのことばに ふゆこさんは しずかにほほえみました。

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「おやおや、あなたたち。こんなところで なにをしているの?」
なにもないせかいに とつぜんこえが きこえました。

「わたしたち がっこうを おいだされたんです」
よにんは こえにむかって せつめいをしました。

「それなら ちょうどいい。あなたたち わたしのがっこうにおいで」
くらやみから あおいかおの おとながあらわれました。

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「わたしは 青井(あおい)せんせい。
『あおいほしのがっこう』のこうちょうです」

あおいせんせいの まんまるのかおをみて 
よにんはふあんになりました。
「でも…」

あおいせんせいは くびをかしげました。

「ほら、ごらんなさい。
じつはわたし、すこし かたむいてるんです。
だからまっすぐには まわれないの。
そんなわたしに あなたたちはきっと ふさわしい」

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よにんはよろこんで 「あおいほしのがっこう」の せいとになりました。

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ぐるぐるぐるぐる。
あおいほしはまわります。
すこしかたむきながら、
たいようがたくさんあたったり、かげになったり。

ぐるぐるぐるぐる。
あおいほしのまわりで、みんなでわになって 
はる、なつ、あき、ふゆ。
きせつはめぐります。

ぐるぐるぐるぐる。
みんながすこしずつ ちがうから
ぐるぐるぐるぐる。
だからほしは まわってる。

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<おわり>
© 2021 岩泉舞

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