ひたすら犬自慢をする

我が家には犬が一匹いる。
チワックスという、チワワとミニチュアダックスの間に生まれたミックス犬だ。
2017年11月に我が家に迎え入れた。

出会いは突然だった。それまで犬を飼いたいと主人に話すと、マンション売却時に値が落ちるという理由で、「すぐ保健所に連れて行くからな!」と強く言われていた。新築マンションを頑張って購入したばかりだったのだ。

当時小学生の息子となんとなく立ち寄ったペットショップに彼は居た。
白くてつぶらな瞳の彼は、他の犬が元気にジャンプしたり吠えたりする中、じっと座って横目で私たちの事を捉えていた。
「げ。なにこれ。かわいい」
7月15日生まれの彼は、その時すでに生後三か月を過ぎており、スーパーのナマモノのようにディスカウントシールが貼られていた。
「うちに来る?」

その日のうちに頭金を払い、契約をしてしまった。
ものすごい勢いだ。こんなに勢いづいたのは、大学生の就職活動時、一人で酔っ払ってアナウンサー職のエントリーをしてしまって以来だ。
その夜主人が帰ってきて、いつものようにビールに合うつまみを出したところで、「話があるんだけど?」と切り出した。
何?と言わんばかりに目を大きく見開き、主人はたじろいだ。
「あの。犬飼います」

主人は普段から本当にリアクションが薄い人間で、その時も微動だにしなかった。
最初に出た言葉が、「犬種は?」だった。
そこで私は勝手に契約した彼の可愛さについて、存分にプレゼンテーションをした。ついつい熱くなり、関西弁丸出しになってしまったくらいだ。
「チワワとダックスフンドのミックスでチワックスって言うねん。あんな、白くて毛が短くて、抜け毛が少なそうやねん!全然吠えへんし、めっちゃおとなしい子で、高貴な感じがしたから、フランスの皇帝みたいにルイっていう名前にしようと思って!」ここまで息継ぎせず出し切った。
「雑種かいな」「隣の子は血統書付きやったけど、自分の出したウンチ食べてて、私そんなん初めて見たから思わずアッて声出してもた!ルイ君は絶対そんなことせーへんもん!お世話は必ず私と息子がします。迷惑かけません。お金も全部自分で払います。だからお願い!!!!」
主人は一呼吸おいて、「で、いつ迎えに行くの?」と聞いた。
それはOKという合図だった。

それから一週間後、購入した小さい移動用のケージを持参し、私と主人と息子と三人で彼のお迎えに行った。雨が降る日だった。

主人はルイ君を見て何も言わない。
ルイ君もじとっと主人を横目で見て、お互い硬直状態が続いている。

私の方は手続きなどを終え、いざ持ち帰ろうとした時、いきなり主人が声を上げた。
「こいつ、自分のうんち食べてるで!!」
興奮しておもわず関西弁が飛び出してる。
おー、ルイ君、おーおールイ君。あなたもまたそうだったのね。
何とも言えない気持ちで、小さいケージに彼を入れ、雨に濡れないよう大切に抱えて連れて帰った。

その後、うんちを食べる習慣は無くなったが(無いと信じたい)、毛はぬいぐるみが作れるくらい抜けるし、めちゃくちゃ吠えるし、私めっちゃ嘘つき。

もうすぐ6歳になるけれど、これでもかと言うほど家族中の寵愛を受け、ルイ君は毎日健やかに過ごしている。
「保健所に連れて行く」と言っていた人と思えないくらい、毎朝5時半に散歩に連れていき、手作りのご飯を与え、お水をこまめに変える主人。

ある時「それだけ犬好きなのに、なんで保健所に連れて行くって言うくらい、飼うことを拒否したの?」と尋ねると、「死ぬのが嫌なんだ」と言った。それが本音だったんだな。だからすんなりと飼うことを受け入れてくれたのか。

それ=死は、これからいつか家族が迎える、人生の大きな大きなイベントだ。
大体、私たち人間だっていつ何が起こるかわからないし。
だからこそ一日一日大切に過ごしていきたい。犬を飼うと余計それを感じる。私たちの人生に彩を与えてくれるルイ君、本当にありがとう。大好き。


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