スパイダー

43. 2019年、見てよかった映画たち (マサデミー賞まとめてみた)

毎年自分に楽しく課している「一年に100本映画を見ること」、今年も無事12/30のベンハー改訂版にて(元祖を見たかったのにアマゾンプライムであるやん!と飛びついたら違ったという残念な100本目でしたが)達成。旧作込みでの100本ではありますが、映画館にも20回いけて、「好きな物事に時間を確保できてる感」という自信にもなったりします。で、昨年某パイセンから「そんなに見たならまとめやってよ!」というフリをもらい始めたこのまとめ。今年もちゃんと書きます。マサデミー賞でございます。

・賞のタイトルは、こじつけです。ただよかった映画を紹介したいだけ。
・基本的には今年観た新作20本から選びました。
・完全なる主観です。

というわけで、今年もしこしこつけてきた個人的映画レビューを見返しながら、書いてみました。タイトルに作品そのもののレビューへのリンクも張っておいたので、そっちもよかったら見てみてください。

ちなみに去年末のマサデミーはこんな感じでした

で、今年は、こんな感じになりました。

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レオ

【最優秀ダメな人賞(主演男優賞)】
レオナルド・ディカプリオ
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

プライドだけは全盛期そのままで、落ち目のメソメソ情緒不安定ハリウッド俳優役を演じたレオ様に贈りたいと思います。この人の演技は「情けなさ」とか「だらしなさ」で輝くとかねてより思ってましたが、それが大爆発してて、サイコーでした。少し話逸れますが、宮崎駿さんが「ハウルの動く城」のハウル役の俳優を探している時、候補に上がってきたキムタクのことを、プロデューサー鈴木敏夫さんの娘が「男のいい加減さを表現できる人だと思う」と評して起用が即決されたっていう話が好きで。その娘さんの的確さにも惚れるんですが、レオ様も「先々のことを考えてない目つき」をさせると最高な役者さんだとそれで掴めた気がしたわけです。思えばジャックの時からそうだったわけ。
次点は「記憶にございません!」の中井貴一とか、「ジョーカー」のホアキン・フェニックスとか。

長澤

【最優秀変顔賞(主演女優賞)】
長澤まさみ
コンフィデンスマンJP

誰もが「当たり役」だと認めるダー子さんに。映画としてはまあ「テレビドラマスペシャルでよかったのでは」と言われる気持ちもわかるけど、大画面でこの変顔を観るのは、どんだけ顔筋を隅々まで恥ずかしげもなく使い切っているのかわかってとてもよかった。もちろん単に変顔すりゃいいのかって話ではないとは思うけど、人を釘付けにする引力みたいなものが主役にどんとあるのは、それだけで個人的には「いい映画だった」と思えるわけで。それがこういう、くだらなくて何も気負ったり考えまくったりしなくても見れる映画に乗っかってくると、自分がどんなに忙しくてしんどいタイミングでも、いつでも娯楽として成立していて、贅沢だとすら思う。なんだかんだで続編も観るんだろうなあと。
次点は「アス」のルピタ・ニョンゴとか。あれも、怖良い映画でした。

ジョーカーデニーロ

【最優秀レジェンド賞(助演男優賞)】
ロバート・デ・ニーロ
ジョーカー

主人公ジョーカーの演技よりも、個人的にはこっちでした。いろんな映画評にも書かれている通り、この映画そのものが、過去ロバートが演じてきた「タクシードライバー」のトラヴィスや、「キング・オブ・コメディ」のルパートの、「なぜ人はサイコパスになるのか」という描写のオマージュで成り立っているわけで、そう考えると、ロバート・デ・ニーロの巨人の肩から見えた風景なんだと思うんです。そう考えると、この映画で演じた「真っ当な人たち側の代表」としてジョーカーと相対する事になる名司会者マレー・フランクリンも、喜劇の役の一つっていう気もしてきて。リスペクト。
次点は「キングダム」の吉沢亮かな。渋沢栄一も今から楽しみです。

女王陛下

【最優秀情念賞(助演女優賞)】
レイチェル・ワイズ
女王陛下のお気に入り

この映画は、もうただひたすら3人の女性の演技の応酬が凄まじかったんですが、実際にアカデミー主演女優賞をとったアン女王より、個人的にはマールバラ公爵夫人サラのこの人の演技が。女の嫉妬と憎悪とマウンティングとで、まるで曇天のイギリスの泥池のようなひでえ映画(褒めてます)だったんですが、こういう人間の暗部を、役者さんが思いっきり演じてるのを観ると、ああ楽しいんだろうなあきっと、って思うわけです。アカデミーでのオリヴィア・コールマンのサイコーなスピーチからも、良い現場・良いチームだったんだろうなってわかるし。そんな中で「最後までプライド折らずに負けゆく人」を演じた彼女が、一番目が離せなかったです。あ、エマ・ストーンの極悪っぷりもサイコーだったけど。
次点は「ひとよ」の田中裕子かなあ。

蜜蜂と遠雷

【最優秀ピアノ賞(音楽賞)】
蜜蜂と遠雷

特に何も予備知識なしで、原作も読まずに、ただ元ピアノ弾きとして見に行ったんですが思いの外よかったのは、音楽の力でした。シナリオが完成する前に音楽のレコーディングを東京オペラシティで行い、その音楽ありきで脚本や役者の演技を組み立てたという作り方や、日本映画では珍しいドルビーサラウンド7.1chで収録も。普通、映画作品は5.1ch(5つのステレオスピーカーと1つ中低音を強調するサブウーファー)で構成するところ、7.1chは、ステレオスピーカーが7つとなるので音の立体感が全然違ってくるわけで、一切、なんでこんな鳥肌立つんだろうと思ったら、「映画館なのにコンサートホールみたいなクラシックの音圧」を体感するってことがこれまでなかったからだった。映画館に行ってよかったと思えた今年の作品の一つ。
次点は「グリーンブック」かなあ。

運び屋

【最優秀悪役賞】
クリント・イーストウッド
運び屋

「悪気はなかったんだ」という言い逃れに対して、「悪気がないのが一番悪い」というカウンターを入れるのは簡単なのだけど、そういう単純に割り切れない色々なものがぐちゃぐちゃに積み重なって年輪のようになって、しかもそれを良い感じでボケて忘れかかってるみたいな、そんな全部を猫背に背負わせて鼻歌交じりでどこまでも続くアメリカの道を運転する爺さんに、こんな悪役見たことないとおもって一票です。この人の創作意欲やら体力やら、どうしてこんなに成長し続けるのだろうかと本気で不思議。

スパイダー

【最優秀作品賞】
スパイダーマン:スパイダーバース

映画として一番よかったのは、これです。割とダントツかもしれない。新体験でした。「新」であることはもちろん「体験」として、すごくフィジカルな映画だった風に感じるのが、忘れがたい。初めてNintendo64でマリオを好き勝手グリグリ動かし狂って遊んだ時みたいの、ディメンションが一段違う次元に上がるような感覚が、映画にもまだ残されていたのかっていうくらいの表現。アメコミへのリスペクト、音楽とのシンクロ、それでいてストーリーもちゃんとしつつも重たくなりすぎないスピード感とかろやかさと説教くさくなさと。娯楽として完璧だったように思います。これも映画館映えする一本。全制作スタッフに最敬礼&畏怖です。


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というわけで以上7作品、選んでみました。どんなにサブスクが充実しても、やっぱり映画館で観ることに意味はあるなあと改めて感じさせてくれる映画を、来年も見ていきたいなあと。コミュ障で対人スタミナが切れた時の駆け込み寺というかシェルターというか、僕にとっては映画館はそういう空間で、一人きりであるがゆえに、自分の感情が全開になっている状態で差し込まれるインプットから何を感じるかは、自分自身を理解することにとても役になっていると思います。それに様々影響を受けてこられた2019年、来年も100本見ます。

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