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トレード

2月27日に楽天・池田投手と日本ハム・横尾選手のトレードが、3月1日に巨人・田口投手とヤクルト・廣岡選手のトレードが決まった。

私は日本ハムとヤクルトのファンなので相手側の事情は知らない。ただトレードの片側のファンから見た選手について書いておこうと思う。

みんなに愛されたおにぎりくん

横尾は「おにぎりくん」の愛称でも知られる長距離バッターだ。愛くるしい顔と豪快なホームランに魅せられたファンも多い。
体型的に守備が苦手だと思われがちだが、実はそれほど守備は下手じゃない。守備範囲は少し狭めかもしれないが、堅実な守備をする三塁手だ。

レアードがいなくなったサードの穴を埋める存在として期待されていたはずなのだが、目立った成績を収められずなかなかもどかしくもあった。昨年もビヤヌエバの虫垂炎や怪我、野村の怪我などチャンスは多かったが、確実性を求めた結果、大きい一発も少なくなり期待を大きく下回る成績となってしまった。

今季のキャンプ中には解説者からも
「これまで充分にチャンスはもらったがなかなか結果を出すことができなかった。これからはもらえるチャンスは少ない。その中で確実に結果を出さないといけない。厳しいシーズンになるだろう」
と言われていた。
確かに今のサード候補の筆頭は野村佑希。注目された中でも結果を残して、評価も人気も高い。ただ彼は経験も浅くシーズン通して戦ったことがなく、守備も不安定で、そこに横尾にも付け入るチャンスはあると思っていた。

しかし突然のトレード。有原がいなくなり(ヤクルト小川の獲得もできず)外国人選手がいつ来日できるかわからない状況で、投手層を少しでも厚くしたい日本ハムの思惑はよくわかる。
楽天側の思惑としては右の長距離砲が欲しいというところか。右の長距離砲筆頭には浅村がいるが、岩見や内田といった浅村の後に続かなければならない若手への起爆剤としても期待されているのかもしれない。
楽天のサードには鈴木大地や茂木栄五郎などがいる。今まで以上に打撃でのアピールが望まれることだろう。フルスイングする「おにぎりくん」が楽天でも見れますように。

レアードがホームランを打った時、Twitterのタイムラインに寿司の絵文字と「握った」の文言が溢れていた。
そして横尾がホームランを打った時、タイムラインにはおにぎりの絵文字と「握った」の文言が溢れた。
日ハムファンにとって
「握った」=ホームラン
なのだ。
寿司(レアード)がいなくなり、おにぎり(横尾)がいなくなってしまって、私たち日ハムファンは今後何を握ればいいのだろうか……

夢とロマンの塊

廣岡は夢とロマンの塊である。
フルスイングでの豪快な一発。ショートでの華のある守備。ルーキーに与えられた背番号36で、多くのヤクルトファンはある男を思い浮かべたはずだ。
池山隆寛。ヤクルト黄金期の1990年台に背番号36を背負い、「ミスタースワローズ」若松勉のあとの背番号1を背負った男。
廣岡がプロ生活をスタートする時から、ヤクルトファンの大きな期待が彼の背にはのしかかっていた。

しかし廣岡は私たちファンの期待を一身に背負いながら期待を超えるデビューをした。
ルーキーイヤーの終盤に一軍昇格し、初打席で初ホームランを放ったのだ。
山田哲人の次に背番号1を背負うのは廣岡だ、などと気の早いファンは言っていた。それほどまでに廣岡は、ヤクルトファンの夢だったのだ。

2017年シーズンも廣岡は着実にイースタンリーグで実績を積み上げていた。イースタンリーグのホームラン王争いを楽天内田、日ハム森山と繰り広げていた。シーズン終盤で首位と4本差。そこから2試合連続ホームランを放ち、2本差。これは三つ巴の激戦が繰り広げられるのでは?と思ったところで一軍昇格。そうだよね、活躍したら一軍に呼ばれるんだよね……と思いつつどこか悔しいような寂しいような気持ちを感じていた。

そこから先、3年間は一軍と二軍を行ったり来たりいながらも、どこかもどかしい日々が続く。二軍にいる日々は年々減っていくけれど、スタメンに定着できるわけでもない。
誰もが廣岡のポテンシャルを感じている。ファンだけではなく、コーチや解説者など数多くの人が廣岡に期待をしていた。でも殻を破れない。毎年期待しながらも、物足りない成績しか残せていなかった。
2019年はショートだけでなくサードも。2020年はショート、サードに加えてファーストやセカンドどころか外野まで守る離れ業を見せながらも懸命に居場所を探っていた。どうにかして、廣岡が輝ける場所を……と高津監督も思ってたに違いない。

しかし2021年3月1日。巨人・田口とのトレードが成立した。
先発投手を求めるヤクルトが差し出したのが廣岡というのは、かなり驚いた。
ミスタースワローズ候補と思われていた男が、夢とロマンの塊と言われていた男が、トレードの駒になるとは。
もちろん廣岡ほどの選手を出さなければ田口という投手は得られないだろう。それを理解していても、廣岡がトレードで出されるというのは衝撃的だった。
良く言えばチームから期待されていた選手、悪く言えば贔屓されていた選手(贔屓が悪いことだとはあまり思っていないけど…ドラフト順位を考えてもある程度の優遇はあって然るべきだと考えている)だから、チームから出されるということは全く予想していなかった。
しかし環境を変えることが、彼の殻を破ることに繋がるという判断だったのかもしれない。寂しいけど、本当に寂しいけれど、受け入れるしかない。

トレードで成功した選手として、真っ先に私の頭に浮かぶのは大田泰示だ。
巨人というチームのドラフト一位として高いポテンシャルを評価され、偉大な先輩である松井秀喜の背番号を与えられながらもなかなか芽が出ず、花開かず、トレードでやってきた日ハムで花を咲かせた。打撃で評価されるだけでなく、ゴールデングラブ賞も獲得し、今や日本ハムには欠かせない選手である。
同じ名前(廣岡の下の名は大志)であることからも、どうにも廣岡と大田泰示がかぶってしまう。
大田泰示は常々「ジャイアンツでやってきた8年間があるから、今がある」と言っている。

願わくば廣岡も巨人で大輪の花を咲かせてほしい。
そして「ヤクルトでやってきた5年間があるから、今がある」と言ってほしい。
単なるファンのわがままだと思いながらも、そんな未来を想像してしまうのだ。

今回のトレードがどちらもWin-Winでありますように。トレードされて良かったという成績を残せますように。

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