左手の人差し指が痒かった日


左手の人差し指を虫に刺された。

蚊かと思ったらブヨだったらしく、一日経って腫れと痒みが出てきた。

家にあったムヒを塗って寝るも、寝ている間に猛烈な痒みと焦りに襲われて変な夢を見ながら掻き毟った。


翌朝、アルバイトのために出社。
仕事をしていても我慢ができないくらい、かゆい。
冷やすものも手元になくて、微妙な温度のペットボトルや机の脚に指をあてる。
腫れている部分が固く熱く、パンッと膨らんでいて痛痒い。

午前中にどうにも辛抱たまらなくなり、昼休みにはるばる歩いてドラッグユタカへ。

歩いて片道10分強かかる。暑い。夏かよってぐらい日差しが強い。でも頑張って歩く。いつもはコンビニにご飯を買いに行くのも5分で済ませるようにしてるけど、それでも歩く。

ステロイド系の塗り薬が効くと聞いたので、1000円もする薬を買って、会社に戻った。

コンビニでもらったお手拭きと薬を机に置き、一時間毎に塗り直していく。

塗った直後は炎症がいくらかましな気がしてくる。けど、実際一時間ともたずに痒くなってくる。
薬を塗っているから掻けない(指がべたべたしちゃうから)、でも掻きたい、その気持ちを抑えるために、こまめに塗り直しちゃう。
説明書に塗りすぎるなとは書いてなかったから大丈夫なはず。


パンパンの人差し指を折り曲げたり観察したりしてるとき、
あるいは薬を求めて暑い中黙々とドラッグストアまで歩いているとき、
私は世界で私が一番好きだ、と感じた。

私の人差し指の痒みと痛みと熱は、私にしかわからない。
私は私の指が今世界で一番大事で、誰にもこの私の指のキズは代われない。


朝と比べると、見た目的な腫れはなんとなくましになってきた。気がする。気のせいかもしれない。
薬を何度も塗られててらてらしている指は、それでもほんのり赤くわずかに太く、
この指の痛み痒みがわかるのはこの世界で私一人だった。


右手を見るたびに、自分の指の綺麗さに驚く。
指に異常がないってなんて素晴らしいことだったんだろう。

局所的なキズを抱えて、孤独と自己愛を思い知った日だった。


ステロイドが効いたのか、指はだんだん治りつつある。

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