二〇一六年五月の短歌
しあわせがここにあるのは知っててもいつもなにかを探して彷徨う
ここではないどこかへ行きたい症候群千切りにして大鍋でゆで
永遠にフィルムの君は若いまま「あきらめるな」と呪いをかける
眠れぬ夜あなたの寝息月あかり秘密の小箱ひとり開いて
幸せであればあるほど部屋の隅の黒猫ひたりとこちらを見つめ
白アスパラゆでる香りでいっぱいのきしむ階段のぼってただいま
裏庭の緑のカーテン濃くなって隠れてキスをするクロウタドリ
地下鉄の窓にうつった青年のピアス数える中央駅まで
はじめてのぶらんこに目を丸くする幼子のため世界はまわる
罪悪感おぼえて見れば君は2倍バターの海にともに沈もう
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