二〇一五年十一月の短歌

背を向けて眠るふたりはお尻だけくっつけている七年目の秋


狂騒のわたしの愛した街遠く静かに墓地ゆく諸聖人の日


落葉の毛布で眠る義父は我知ることもなく鐘は鳴りゆく


妻の乗る車椅子押す老人の痩肩に落つ葉はあかあかと


読書家の窓辺の老人姿消し主変えた部屋は白く明るく


じゃがいもと、細い大根、ソーセージ。おでん煮ている外国暮らし


キッチンでスマートフォンを眺めてるあの子の白無垢、おでんの香り


気まぐれに早起きすれば黒ガラス柘榴つっつく霧のミュンヘン


爪を噛む子に「名前は?」と尋ねても老女のドイツ語宙に浮きおり


ハロウィンの夜に見つけた恋だからいまでもふいに失いそうな

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?