二〇一六年二月の短歌

サーカスのポスター眺める難民の目は虚ろなり地下鉄の駅


とんかつを揚げた私の髪からは母の匂いがして郷愁


春近く分厚いヤッケ脱ぎ捨ててあなたと走る雨上がりの道


あの人に素直にダンケと言えたなら素敵なセーター一枚買おう


責任を取ってくれるの本当に? 深くなりけり目尻のシワの


丘のぼる空は快晴気温二度さえぎるものなく堆肥はかおりて


雨やまぬ日曜の部屋薄暗くあなたのうなじの匂いかいでる


いたずらに重ねし年をもてあます夢はこぼれておちていくのに


カフェの奥青年に化けた魔術師が仕上げたドローン高く掲げて


咲き誇る修道院の待雪草無垢な少年の恥部より白く

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