二〇一六年十一月の短歌
オーブンのスフレ膨らみ窓の外見れば難民背丸めて行く
彼の焼くホットケーキが香りたつ土曜、秋晴れ、薬缶の蒸気
憂鬱と一緒に放てばくるくると楓の翼果地を目指しおり
黄葉の木々のすきまにちらちらと子らのヤッケはより鮮やかで
「下手でしょう、昔はもっと弾けたのよ」と鍵盤なでれば外は初雪
マフラーに顔をうずめて雪のなかあの人待った冬の故郷よ
ふわふわと決して積もらぬ初雪のはかなさ我の卵子にも似て
腹中で精子と卵子が出会うのは都市伝説の類のことなり
十六年ぶりの同窓会メールに迷うことなく書き込む「×」と
義母のためクリスマス菓子焼いたのは「無事、同化」示す嫁の気遣い
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