小説「敵」

戦っている。わたしの作り出した敵と戦っている。

そいつのことは味方だと思っていたのに、

いきなり敵になった。

敵か味方か、見分けるのは、

そいつがわたしを嫌って、わたしに向かって攻撃しているかいないかだ。

悪意を持っているかどうかではない。

そいつが悪意がなかろうがあろうが、攻撃に思えて攻撃だとわたしが気付いたらそれはもう敵だ。

一度敵だとみなしたら、その人と接するのは難しくなる。わたし自身が気まずく、腹が立ってしまって。

逆に味方だと思えばおうちにも招くし、ドライブするし、相談したりもする。一度敵だと思うと「敵だ」と思っている自分が恐ろしいのでなるべく敵は増やしたくない。

でも世の中に敵はいっぱいいる。そこらじゅうにいる。敵センサーを鈍らせているのに現れる。敵なんていっぱいいるのはそりゃ事実だろうけど、それに気付くと自分の中の攻撃性や自己中な毒はぶくぶくとあふれ出す。ああ、敵だったんだ、ああ、だからあのときのあの発言か、と思うと怒りが膨らんでいく。

その結果、最終的に現れるのは被害者意識だ。敵がわたしをいじめようとしていたんだ。敵のせいでわたしは辛い思いをした。思い出すだけでつらい。どうしよう。

悲しい。なんとなく違和感はあった。敵だなんて思いたくなかった。敵か味方か。なんでも白黒、敵か味方か。そんなものさしで測れるものではないのだろうな。


わたしが味方だと思っているなかにも敵はいるかもしれない。フレネミーというんだっけ?


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