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軽率に異世界に行った話1

一昔前の掲示板で目にした異世界に行った話が好きでした。有名どころでは「ゲラゲラ医者」とか「きさらぎ駅」とか。

なぜ好きだったかというと、自分でも半信半疑だし、掲示板に晒すだけのドラマチックな展開もないので、近しい人間にしか話してないけれど、ぼくも異世界に行ったっぽいからです。

それも割と軽率に何回も(笑)

一回目は高校2年生の時。

ある日の夜中、ぼくの暴れん坊将軍が「余は新しいオカズを所望す!」と暴れ出したので、自販機までエロ本を買いに行くことにしたのです。

当時はネットで安易に45れる環境ではなく、AVも未成年はレンタルできんし、よしんばできたとしてもビデオデッキはリビングにあるという状況。

ほとばしるパトスを開放する手段としては、書籍しかないし、ド深夜に入手する方法は自販機しかございませんでした。

自宅からバイクで15分ほどの場所に、エロ本の自販機はありました。何度かそこでオカズを購入したこともあり、ぼく的には行きつけの店みたいな感じ?でした。

そこに行くために大量の百円玉をポケットに入れて、ぼくは家をそっと抜け出し、オヤジの90ccのカブにまたがったのです。自分用のHONDA VT250という素敵なバイクもあったけれど、その日はなぜか父ちゃんのカブをチョイスしました。

ガッチョーンガチョーン!とギアチェンジをしつつ、15分かけてエロ本自販機に辿り着いたぼく。しかし自販機には暇を持て余した大学生かDQNの集団が先客としていました。

複数の恐らく年上ヤングと対峙する度胸もなかったので、ぼくは「あくまで通過するだけですよ!」的な空気を勝手に醸し出して、自販機の横の小道に入ったのです。

この小道はすぐに田んぼの真ん中を突っ切る、軽トラ一台が通行できるような道になり、5~600メートル進むと高速のICに繋がるバイパスに合流し、そこを経由して迂回するとまた自販機に戻って来られるものでした。

迂回して戻ったら先客もいなくなるだろうと考えた訳です。

で、小道を進んでいくと、道は知っている通り田んぼの中に出ました。その道じたいに街灯は皆無なのですが、左右の田んぼを挟んだ道には明かりが見えます。

一刻も早くオカズを購入して家に帰りたいと思うのですが、ある瞬間、異変に気づきます。

どう考えても1キロ以上進んでいるのに、ICに繋がる道に到着しないのです。気のせいかと思ってメーターを確認して走り続けると、1キロどころかそこから2キロ以上進んでも目標にした信号に辿り着けません。

田んぼの両側の道には街灯があり、その明かりに少し安心したぼくは、地理的に勘違いをしてるんじゃないかと自分を疑いつつ、走り続けます。

しかしどれだけ走っても信号には辿り着けず、田んぼの両側で併走していた道も、いつの間にか結構離れた場所にあり、頼りにしていた街灯も朧気になってきました。

さすがにボンクラ精子脳なぼくも「これは何かヤヴァイぞ」と思い、カブを止めました。時計を見ると午前2時ちょうど。家を出たのが12時半くらいだったので、90分ほど経過していました。

生ぬるい風が吹いて、水を張った田んぼからは割れんばかりの蛙の声が聞こえてきました。雲もないのに星も月もない空が、どこまでも広がっているのを見上げた記憶があります。

あまりに空の黒さに怖くなったぼくは、狭い道でカブを回転させて、元来た道を戻りました。メーターと時刻を確認して、何かから逃げるようにカブを飛ばしました。

無事に自販機の場所まで戻って来たのですが、時刻は午前3時を回っていて、メーターは30キロを超えていました。

30キロも走ったらとんでもない場所まで行ってしまう小さな街です。どう考えてもおかしいと思いましたが、先客はいなくなっていたので、エロ本を買って無事に帰宅しました。エロ本はおばさんがセーラー服を着ているような大ハズレモノで、さすがのぼくも使えなかったのを覚えています。

翌日、学校から戻った16時過ぎに、気になってもう一度昨日の小道に行ってみました。小道はすぐにICに繋がる道に接続しました。

道を間違えたのかと思ってもう一度通ったのですが、ICのバイパスまでは一本道でした。帰宅して地図を見ても、やはり道は一本しかありませんでした。あれ異世界に入ったんじゃないかと、今でも思っています。

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