猫目探偵鯖虎キ次郎の冒険「鋼の嘴」17

□監視画像

「なんだかヤバいですぜ、先生」
「なんなんだ、これは……」

 鯖虎探偵社の事務所で鯖虎と針筵は頭をかかえていた。
 目の前のモニターに次々に奇怪なものが映し出されている。鯖虎が例の大山のタワー内部に放ったマイクロ監視ロボットから、刻々と映像が送られて来ているのだ。その映像の異様さに、二人は言葉を失った。
 一つ目のモニターには工場にずらりとならんだ二足歩行のロボットが映し出されている。それらはどれも背中に、金属製の、まるで悪魔を思わせる翼がついている。頭部には何もなくシリコン製と思われるチューブの束が刷毛のように飛び出していた。
 二つ目のモニターでは、風洞装置の中につり下げられたロボットがものすごいスピードで羽ばたきをくりかえしている。

「強度試験だ」
「金属製の悪魔ですぜ、こりゃ」

 3つ目のモニターには、薄暗い部屋の中に並んだおびただしいガラス瓶が映し出されていた。

「何が入ってるんでしょうね」
「もう少しアップにしてみよう」

 鯖虎がコントローラーを操る。カメラはふわっと浮き上がり、ガラス瓶の一つに近づいていった。
 カメラのピントが一瞬揺れ、再び鮮明さを取り戻すと、そのモニターには、鯖虎がもっとも見たくないものが姿を現した。

「これは、レグホンだ、マドリードの殺人鬼、オ・ラ・レグホンの頭だ……」
「なんじゃコラ、こんなにたくさん…」
「培養されたんだ。このタワーで一体何が……」

 その時、画面の中の白色レグホンが、カメラをギロリと見据え、笑ったように見えた。

 ふーっ!ダイニングの暗闇に姿を隠したとめきちが威嚇音を発した。
 暗闇から、巨大猫が、光る両眼でモニターを見つめ、背中の毛を逆立てている。



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