猫目探偵鯖虎キ次郎の冒険「鋼の嘴」16
□二人の忍者
月明かりのなか、大山商店街にすばしこく動く2つの人影があった。
ひとつは長身、一つは丸い。鯖虎探偵と針筵助手だ。ふたりとも忍者の装束に身を包み、音もなく商店の屋根を、雑居ビルの壁面を移動していく。顔面にはものものしい防毒マスクをつけている。二人は潜入捜査は機能的な忍者装束と決めていた。
やがて二つの影は、板橋税務署裏の、例のタワーに到着した。
二人はタワーのスレート葺きの壁面をするすると上っていく。
針筵は壁面に手頃な通気口を見つけると鯖虎に合図した。そして、背中にしょった袋からなにやら筒のようなものを取りだした。鯖虎は、その筒を受け取ると通気口に差し込み、慎重に振りはじめた。筒の先からは、きらきらひかる紙吹雪のようなものが漂い出し、通気口の空気の流れにさからって、建物の中へと入っていった。
それは、超小型カメラにヘリコプターのような微細な羽をつけた、マイクロ監視ロボットの群れだった。無言で仕事を終えた二人は、また音もなく壁面を走り去った。
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