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第67回まひる野賞受賞作自選10首②

「点滅抒情」滝本賢太郎


触れたれば感電死してしまうだろう白梅は花あんなにつけて
 
北を向く窓辺に飾る子どもらがアルファベティカルに死にゆく絵本

ソロキャンプとさして変わらぬ生活で火を焚くごとく翻訳をなす

訳し難き一語をずっとあぐねつつずるり引き出す緋烏賊の腸を

凍らせた烏賊は凶器となることを聴きたりあれはいつかの花見
 
涅槃にはお出入り禁止の身を置けばざんと桜の降り積むベンチ

俺にしかできぬ仕事という幻ぶん投げに春の浜まで下る

ももんがに飛魚不思議に空を飛ぶ生にまだまだ憧れている

ワルツでもやっぱり暗いブラームスで夜が明けるまで踊っていたい
 
鮭に塩延々すりこませるごとく訳し直せり序章の結び

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