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時評

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2023年2月の記事一覧

時評2023年2月号

時評2023年2月号

抒情ではないが、だがいい

               滝本賢太郎



 自死に関する本を二冊続けて読んでいた。一つは佐藤清彦『にっぽん心中考』。情死大国日本の心中の事例を細かに紹介する作だ。もう一つは保阪正康『死なう団事件』。原理主義的に過激化した新宗教「死のう団」こと日蓮会青年部の盛衰を描く。内部の裏切りや警察の弾圧の下、日蓮が強調した不惜身命を、彼らは死こそ真の信仰なりと解釈するに到る

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