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【感想】神様のカルテ3

人生を続けて行くのに、必要なものが二つある
前に向かって歩く足と、一服したときに飲むうまいコーヒーだ

主人公栗原一止の言葉に、生きていくのに大層な理由なんて必要ないんだと気がついた。
そうか、前に進むための足があって、ちょっと休みたくなったときに飲む美味しいコーヒーがあればそれでいいのか。
ちょっぴり心が軽くなった瞬間だった。

栗原が勤める病院は相も変わらずだけれど、そんな中でも確かに変わり始めているものもある。
新任でやって来た医師の言葉に、強い覚悟に、栗原がこれまで信じてきたものが揺らぐ。
様々な事情を抱えた患者達に、それぞれの信念、それぞれの哲学を抱えて医師達が向き合うのが神様のカルテ3巻。

自身の進むべき道について悩む栗原一止に、つい自分を重ねてしまった。
だからだろうか、この3巻が一番心に響いた。

最初に書いた栗原の言葉以外にも、心に残った言葉がある。
それは栗原が住む御嶽荘の住人、絵描きの男爵が同じく御嶽荘の住人である大学生の屋久杉くんに言った言葉。
作中では屋久杉くんが、男爵からこんな風に言われたと栗原に話す形で書かれている。

「生きるってことは、学歴とか肩書きとかを搔き集めていくことじゃない。今自分にできることを、少しずつ積み上げていくことだ」

だったら積み上げていくか。
今自分にできることを少しずつ。
そうやって前に進んだ先で疲れて休みたくなったら、美味しいコーヒーを飲んだらいい。

過酷な地方医療の現場で戦い続ける栗原のように、進む先を見据えて歩き出した栗原のように
私も、悩みながらでも進んで行きたいと思った、思わせてくれた1冊だった。


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