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【感想】神様のカルテ0

本編主人公 栗原一止の医学部生時代。
本庄病院に“24時間365日対応”の看板が掲げられることになったときの話。
栗原の研修医時代。
まだ栗原の妻となる前の榛名の冬山登山の話。
以上4編が詰まったシリーズ初の短編集、神様のカルテ0。

私がこの短編の中で1番心に残ったのは、最後の冬山登山の話。
本編では既に栗原の妻となっているハルこと榛名が、まだ栗原と出会ったばかりの頃の話。
と言っても、2人仲良く冬の山を登る話ではない。
この話では、榛名の隣に栗原はいない。彼女は1人で山を登っている。
そして彼女の他にも、様々な事情を抱えて山を登る人達がいる。

この話には医者が登場しない。
医者がいないということはつまり、自然の驚異にさらされて死が目前まで迫ろうとも、駆けつけて助けてくれる人がいないということでもある。
けれど“助け”というものは、何も医者だけが出来ることなわけではない。
医療の知識はなくとも、救いの手を差し伸べることは誰にでも出来る。
その手をとって生きるか、絶望の縁で死を選ぶかは自分次第だけれど。
それってある意味で、病院を舞台にした場合よりももっと、“命”や“生きる”ことについて考えさせられる。
私にとってこの冬山登山の話は、そういう話だった。

小難しい言い回しや専門用語が飛び交うような医療ものは頭が追い付かないので苦手だけれど、そんな私でも神様のカルテは本編もこの短編もすいすい読めてしまった。
今まで何度読み返したかわからないが、好きなシリーズのうちの1つなので、これからも定期的に読み返していきたいと思う。
読むたびに、前回読んだときより年齢を重ねているため、心に刺さるポイントが違ってくるのもまた面白い。
本を読み返す楽しみは、そういうところにもあると思う。

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