峰不二子を考察する。
峰不二子は作品によって随分と印象が違う。
共通するのは〝一筋縄ではいかない、いい女〟であること。
どれもその時代を反映している。
見た人それぞれに峰不二子の印象はあると思う。
ある人には、恍惚とするほどいい女。という印象だろうし、またある人には、傲慢で嫌な女。だと思う。
どれもこれも峰不二子の魅力。
その魅力の根本を考察してみようと思う。
まず、峰不二子と言って一番に思い浮かぶのは、あの容姿。
完璧なスタイルに完璧な顔。
さらに付け加えるなら、心が強くて、一人で生きていける強さがあるという事。
私たちの思う〝普通の生活〟以上の事が出来る能力を持っている。仕事もできるし、頭もいい。顔もよければスタイルもいい。
だけど峰不二子は、その生活では満たされない。
その生活では満たされないから、スリルを求めて盗みをする。
その本質にある原動力は〝退屈〟だと思う。
私には、峰不二子は死ぬまでの退屈をスリルという刺激で埋めている様に思う。
峰不二子は自分の最大の武器が美しさという事をわかっている。
それを使ってどこまでいけるのか知りたい、という興味。
ただ、作中ではそのための努力をしている様に見受けられる所がいくつかある。映画でタバコを吸うのを途中でやめたりだとか、出された食事に「こんなに食べたら太っちゃうわよ」だとか。
あの峰不二子の見た目には、天性のものと、それにも勝る努力がある。
そして峰不二子の凄い所は、プライドは高いが、それを下げる事が出来るという事。
下げる事で自分にメリットがあるのなら、何の抵抗もなくプライドを捨てる。それも自分の手札の一つだから。
どう考えても自分と釣り合わないおじさん教祖の婚約者になって平気な顔でキスをするし、聖女の様な微笑みを浮かべるし、規制がかかる様な服を着て踊る。
目的の為なら、なんでもできるのに何もできないひ弱な女を演じる。
それが峰不二子の凄い所。
それに唯一対等に付き合っていけるのが、ルパンなのだと思う。
五右衛門や次元では手に負えない。すぐにプライドに触れて、嫌気がさして、愛想尽かしてしまうから。
だけどルパンも峰不二子と同じように、目的の為ならプライドを下げる事が出来る。
二人の関係は凄く大人の関係。
お互い手に入れられない事が分かっていて、手に入れようとする。
ルパンは簡単に手に入れられないものを盗みたいと言っているから、本質なのかもしれないけれど、多分峰不二子にとっては、重要だけど自分の人生の本質ではない。
美貌とか、知性とか。
その自分の掴み取ってきた手札を使い果たした先の滅びが見てみたい。という、一般人には到底理解できないであろう欲望が、峰不二子にはある。
自分のその考えに殺されない様に、どうしたらいいのかわからない、手に余る衝動に全力であらがって、もがいて生きている様に見える。
文学的な一面を持ち合わせている人だというのが、私の思う峰不二子。
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