山木マヒロ

創作は生きがいです。生みだす過程に苦痛は伴いますが、完成した時の喜びは格別です。 あな…

山木マヒロ

創作は生きがいです。生みだす過程に苦痛は伴いますが、完成した時の喜びは格別です。 あなたの心にのこるなにかを作れたら本望です。

マガジン

  • ヘッドハンター

    直近で作っていたものが、同じ世界観のお話なので、マガジンにまとめてみようと思いました。ヘッドハンターが、フリークスのボス〝ヘッド〟とそれを慕うものたちの頭を狩るお話です。登場人物は全て通称で呼ばれ、名前は一切出てきません。また、結果を先に言うと、ヘッドの狩りは失敗します。決まっているのはそれだけで、何話で終わるのかは今のところはわかりません。

記事一覧

クイーンビー

 むかーしの話をするわね。  あたしがプライマリースクールのおチビちゃんだった頃、クラスメイトに気になる子がいたの。その子は女の子だったけれど、あたしはその子に…

20

スーパースター

 掲示板に貼られたお尋ね者の人相書き。  全然似ていないが、見知った顔に『済』がついている。そうか、あいつ狩られたのか。ヘッドを慕う同士であったが、なんとも思わ…

20

ウソツキ

 僕の父さんは、嘘つきだ。  僕が嘘をつかずにいい子にしていたら、父さんは必ず帰ってくると言った。だから、僕は嘘をつかずにずっと帰りを待っていたんだ。  それなの…

31

ヘッドハンター

「もしも、俺の生きる喜びが、公園で遊ぶ子どもたちを優しく見守ることだったとしたらな」  そのフリークスは、ビルとビルの隙間で大の字になり、真っ黒な空を見上げて言…

山木マヒロ
10日前
31

週刊彼氏

 サリは押し入れの奥に眠っていたケンの起動スイッチを押した。  ケンはゆっくりと目を開ける。 「ごめんね。だって僕には……、どうしてサリちゃんがそんなに怒っている…

山木マヒロ
2週間前
40

サキモリノウタ

 老人ホーム『サキモリ』の朝は早い。  田代は、まだ夜も明けきらないうちから利用者に食事を提供するために準備をしていた。  作業は完全にマニュアル化されている。食…

山木マヒロ
2週間前
29

自転車泥棒

 うだるような暑さ。  けたたましいセミの鳴き声。  それだけで滅入るというのに。 「キミたち、ダメじゃないか」  お巡りさんは諭すように言った。 「「すみません」…

山木マヒロ
3週間前
29

カレーをかける前の男

カレーをかける男 #中辛 カレーをかける男 #辛口 カレーをかける男 #甘口  千代田区神田の神保町は、どんなイメージがありますか?  古本屋。喫茶店。それに……、カレ…

山木マヒロ
3週間前
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高遠 ちどりさんの創作大賞応募作は『怪異マニアの仲條先輩は今日もお気楽』ホラー小説部門です。章立てで全三章、現在は二章まで完結済みです。スッキリ読みやすい、ホラーらしいホラー作品で夏の夜にピッタリです。

https://note.com/light_clam8523/n/n1a79233d7142

山木マヒロ
3週間前
18

高遠 ちどりさんに『レンタルボックス』をご紹介いただきました。私のあらすじ文と差し替えたいほどの絶妙な紹介文です。ありがとうございます。

https://note.com/light_clam8523/n/n64db3536237b

山木マヒロ
3週間前
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カレーをかける男 #甘口

甘口 「部長、さあ着きましたよ」  慎一は部長を彼女の家まで送った。 「あー、ありがとー。ふぁー」  玄関に入ると、部長はその場に寝転んだ。 「ダメですよ。こんなと…

山木マヒロ
3週間前
33

カレーをかける男 #辛口

辛口  薄暗い居酒屋チェーン店で、テーブルを挟んで慎一は部長と対面して座っていた。  二人の間には緊張感が漂っていた。  部長から「相談があるの。ちょっと付き合っ…

山木マヒロ
3週間前
25

鰯野つみれさんの『シュレディンガーはたぶん猫。』ホラー小説部門です。全部読んでから紹介したかったのですが、応援期間が今月末までなんです。まず三話まで読んでみることをオススメします。

https://note.com/iwashinotsumire/n/n584b9c63cdb4

山木マヒロ
3週間前
14

鰯野つみれさんから『レンタルボックス』をご紹介いただきました。お祭りに参加するとは、読むまでも含めてなんだと改めて思いました。本当にこういうところだな、と思います。

https://note.com/iwashinotsumire/n/n545bc41fa859

山木マヒロ
3週間前
13

カレーをかける男 #中辛

中辛  静寂に包まれた空間に、柔らかな光が天井から降り注ぐ。  そこは美術館。  展示室に一歩足を踏み入れると、厳かな雰囲気が漂っているのが分かる。高い天井から吊…

山木マヒロ
4週間前
28

創作大賞に関して

 本日が創作大賞の締め切り日ですね。  私はいくつかの目的があってnoteを始めました。まさか、ここでコンテストをするとは思っていませんでした。とはいえ、創作が仕事…

山木マヒロ
1か月前
39
クイーンビー

クイーンビー

 むかーしの話をするわね。
 あたしがプライマリースクールのおチビちゃんだった頃、クラスメイトに気になる子がいたの。その子は女の子だったけれど、あたしはその子に夢中だったの。
 あたしよりずっと背が高くて、髪の毛だってサラサラだったんだから。
 その子とおんなじものを持ちたくて、ポーチや消しゴムをお揃いのにしたんだ。そうしたら、その子はあたしの気持ちに気がついたの。
 誰も見ていないところで、手を

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スーパースター

スーパースター

 掲示板に貼られたお尋ね者の人相書き。
 全然似ていないが、見知った顔に『済』がついている。そうか、あいつ狩られたのか。ヘッドを慕う同士であったが、なんとも思わない。子どもを狙うセンスのない奴だった。
 あんな奴でもヘッドはフリークスとして認めていたのか。確かにあの人なら、そうするだろう。ヘッドは僕たちマイノリティの星、スーパースターなのだから。

 僕が初めてヘッドに出会ったのは、学苑の屋上だっ

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ウソツキ

ウソツキ

 僕の父さんは、嘘つきだ。
 僕が嘘をつかずにいい子にしていたら、父さんは必ず帰ってくると言った。だから、僕は嘘をつかずにずっと帰りを待っていたんだ。
 それなのに、父さんは帰ってこなかった。
 父さんは、フリークスという悪いやつらを捕まえていた。そのフリークスに父さんは殺されたらしい。
 父さんを殺したフリークスを僕は調べた。やつらはヘッドというフリークスを筆頭に傍若無人に暴れ回っていた。そのく

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ヘッドハンター

ヘッドハンター

「もしも、俺の生きる喜びが、公園で遊ぶ子どもたちを優しく見守ることだったとしたらな」
 そのフリークスは、ビルとビルの隙間で大の字になり、真っ黒な空を見上げて言った。雨がパラパラと落ちてくる。
 フリークスってのは、こいつみたいに、偏執的な思考、指向、嗜好をもつヘンタイのことだ。
「だったとしたら?」
「俺は一日中、公園のベンチに座り、子どもたちが公園の外に飛び出したり、ケガしたりしないように見守

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週刊彼氏

週刊彼氏

 サリは押し入れの奥に眠っていたケンの起動スイッチを押した。
 ケンはゆっくりと目を開ける。
「ごめんね。だって僕には……、どうしてサリちゃんがそんなに怒っているのか分からないんだ」ケンはそう言って、サリの顔をマジマジと見た。「あれ? サリちゃん、少し大きくなった?」
 ケンはズリズリと這いずるように押し入れから出てくる。バッテリーが切れかかっている。
 ケンは『週刊彼氏』を買って、サリが組み立て

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サキモリノウタ

サキモリノウタ

 老人ホーム『サキモリ』の朝は早い。
 田代は、まだ夜も明けきらないうちから利用者に食事を提供するために準備をしていた。
 作業は完全にマニュアル化されている。食材は全て準備され、中央から送られたレシピ通りに調理を進めるだけだ。とはいえ、こういった仕事が初めての田代は時間に追われて焦っていた。作業を効率的に進めるために、何度もレシピを確認しながら手を動かす。
 それに反してベテランスタッフたちの動

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自転車泥棒

自転車泥棒

 うだるような暑さ。
 けたたましいセミの鳴き声。
 それだけで滅入るというのに。
「キミたち、ダメじゃないか」
 お巡りさんは諭すように言った。
「「すみません」」
「とりあえず名前と年齢を教えてもらえるかな」
「スズムラ……アオイです。えと、高二です」私は肩を落として言った。
「え、お前、アオイっていうの? 俺はてっきり……」ユウキは驚いている。
「うっさい。今はいいだろ」私は小声で怒った。

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カレーをかける前の男

カレーをかける前の男

カレーをかける男 #中辛
カレーをかける男 #辛口
カレーをかける男 #甘口

 千代田区神田の神保町は、どんなイメージがありますか?
 古本屋。喫茶店。それに……、カレーの聖地。そうですよね。それなら良かった。僕たちの努力は無駄ではなかった。
 僕はね、僕にとって神保町は監獄の街です。そんな話聞いたことない? そりゃそうです。記憶や記録から消されてしまったんです。だから、これは僕の戯言だと思って

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高遠 ちどりさんの創作大賞応募作は『怪異マニアの仲條先輩は今日もお気楽』ホラー小説部門です。章立てで全三章、現在は二章まで完結済みです。スッキリ読みやすい、ホラーらしいホラー作品で夏の夜にピッタリです。

https://note.com/light_clam8523/n/n1a79233d7142

高遠 ちどりさんに『レンタルボックス』をご紹介いただきました。私のあらすじ文と差し替えたいほどの絶妙な紹介文です。ありがとうございます。

https://note.com/light_clam8523/n/n64db3536237b

カレーをかける男 #甘口

カレーをかける男 #甘口

甘口

「部長、さあ着きましたよ」
 慎一は部長を彼女の家まで送った。
「あー、ありがとー。ふぁー」
 玄関に入ると、部長はその場に寝転んだ。
「ダメですよ。こんなところで寝たら」
「だーいじょうぶ」
「ちゃんと、着替えて布団で寝てくださいね。いいですね。僕は、もう行きますよ」
 慎一がドアノブに手をかけたとき、寝転んだ部長がズボンの裾をつまんだ。
「ねえ、なんでカレーをかけるの?」
「え?」

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カレーをかける男 #辛口

カレーをかける男 #辛口

辛口

 薄暗い居酒屋チェーン店で、テーブルを挟んで慎一は部長と対面して座っていた。
 二人の間には緊張感が漂っていた。
 部長から「相談があるの。ちょっと付き合ってくれないかな、国崎くん」と誘われていた。相談とはなんだろうか。
 氷がたくさん入ったジョッキのレモンサワーを、部長はこくこくと飲んだ。あまりお酒は強くないらしい。薄い化粧の奥で頬が赤く染まっている。
「それで、今日もカレーは?」部長が

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鰯野つみれさんの『シュレディンガーはたぶん猫。』ホラー小説部門です。全部読んでから紹介したかったのですが、応援期間が今月末までなんです。まず三話まで読んでみることをオススメします。

https://note.com/iwashinotsumire/n/n584b9c63cdb4

鰯野つみれさんから『レンタルボックス』をご紹介いただきました。お祭りに参加するとは、読むまでも含めてなんだと改めて思いました。本当にこういうところだな、と思います。

https://note.com/iwashinotsumire/n/n545bc41fa859

カレーをかける男 #中辛

カレーをかける男 #中辛

中辛

 静寂に包まれた空間に、柔らかな光が天井から降り注ぐ。
 そこは美術館。
 展示室に一歩足を踏み入れると、厳かな雰囲気が漂っているのが分かる。高い天井から吊るされたシャンデリアが煌めき、壁には精巧な額縁に収められた絵画が所狭しと飾られている。絵画には説明パネルが添えられ、訪問者は一つ一つの作品をじっくりと鑑賞している。
 慎一は恋人のマミと上野にある美術館を訪れていた。静謐な空気が二人の間

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創作大賞に関して

 本日が創作大賞の締め切り日ですね。
 私はいくつかの目的があってnoteを始めました。まさか、ここでコンテストをするとは思っていませんでした。とはいえ、創作が仕事に繋がるのであれば、と頭を切り替えました。それは私の夢のひとつなので、参加しておいた方がいいだろうと。
 急ごしらえで四つの物語を応募しました。すべてホラー小説部門です。当初の予定では、長編のファンタジーも応募する予定でしたが、このno

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