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「社会科」を知るために②

先日の投稿「社会科を知るために」に続く第2回目である。ここで挙げる内容は、自然科学的学習を履修した上でのまとめたレポート内容を引用したものを紹介する。なお、レポートの課題として「社会科の性格は、自然科学的学習と比較してどのような違いがあるか、具体的事例を挙げて説明しなさい。」と示している。

1.はじめに
 最も重要と理解しているポイントは以下の4つとして、これらが社会科の性格であるとし、自然科学学習から私の考察を述べたい。
1.実験不可の教科である
2.社会の仕組みを目で捉えにくい教科である
3.社会認識を用いる教科である
4.市民性の形成をする教科である

 このように追及することが社会科の本質を明らかにすると共に、社会科学習指導法において、これが教科指導の中で成立出来ることが教員の技術で問われることを意識している。

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2.「実験が不可能である。」に対して
 社会科ではないか、自然科学という視点から理科の授業の一部を取り上げる。これらは、社会科でいうと、動植物の成長過程や歴史の過程などを実体験的に認識できるのと考えればいいと思っている。
 上の図のように酸素の精製を例にしてみた。酸素は二酸化マンガンを触媒とし過酸化水素水を入れると、化学反応をして酸素が発生する。その酸素は無味無臭であるが、集気ビンに集めたはずの酸素を確認する方法として、集気ビンに火のついた線香を近づける。そうすると激しく燃える。そのため集気ビンに酸素が集められたことが分かる。よって酸素は化学反応をして発生し、無味無臭でも酸素が集まったということが分かり、これが酸素の性質として激しく燃えてしまったことがわかる。だけど、社会科では「産業革命」や「公害教育」のように実験的に追及できないことが多い。       実体験がないと社会認識は難しく、時期が遅れて発生することもあり、出来事の背景を理解するための授業にはやりにくいといわれている。でも、実験できない社会科なら、逆に自ら問いを持って具体的な地域の人間と環境にかかわることを通すことを伝えることで、学ぶ生徒が地域理解を深めることができる。つまり、問いを持って自らの目と足、体全体で学ぶ方法を身に着けることが学習指導要領で示している内容と一致しており、そこで学んだことが、他の学習に生きて働く力につながっていることになる。
3.自然科学的学習との比較をみる
 前章で取り扱う社会科の性格に加えて、学習指導要領の改訂で学習内容が 30%削減され、日本の児童生徒は、小学校から高校の間に学習する自然科学の内容において量的にも質的にも極めて少なくなっている状況がある。このことから、学生に生起する課題を明らかにして、それに対して現時点でも可能な対策を考察することが教育現場で働く教員の指導技術にかかっていることがわかる。
 社会的な見方や考え方を確実に習得させ、それを活用して他の事象を説明できるか。そもそも社会的な見方や考え方を習得させる段階で、反証材料となる他の事象を用いて説明できるか。教員自身の授業実践を通して、いかにしてこの二つの説明を生徒が行うことができるようになるれればそれでいい。森分(2000)によると社会科における「説明」とは、「近代社会科学の方法原理であり、社会科を社会科学科としてかたどる際の原理となるもの。また、子どもにとってより意義があり、客観的に根拠づけられた授業を構成するための方法原理でもある。社会科は問題解決や意思決定、行動の基盤となる事実の正しい認識のみをねらいとすべきである。そして、科学的説明を原理とするとき、そうした教育を実現できる、というのが説明主義の立場である。」と述べられている。つまり社会科の性格のなかでも私が思っている違いは「説明」の仕方である。
 
4.まとめ                             最近、文部科学省が強くいわれているのが「言語活動の充実」である。「言語活動の充実」が全教科・領域に求められていることはもちろんだか、「言語活動の充実」のほかに「読解力」を社会科の授業を通して、生徒がどの大きさや深さの「説明」ができるようになったかを考えると、2で述べた「科学的な説明」を教員が行うことで児童生徒が最終的に社会的な見方や考え方(概念・理論・法則)を習得し、これらが社会科の授業力の質的向上を図ることにつながる。学習指導要領「社会科」にも記載されている「地域社会の形成に参画し、その発展に努力しようとする態度を養う」ことにも一致の成果を示すことで、自然科学的学習も「読解力」等の育成に踏まえることは社会科の授業で、大きく貢献できるものと考えられる。

【参考文献】
森分孝治(2000)「社会的なものの見方考え方の拡大・深化・体系化」
『学校教育  No.1000』学校教育研究会               佐藤群巳(1983)「社会科授業づくりの基礎・基本」明治図書