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声代わりの手話言語に想うこと

目が見えない障がい者や肢体不自由で車椅子の生活をする障がい者など、障がい者のほとんどは普通の人と同じ、聴覚はもっているわけである。そのため、音を聞いたり音を発することで日常生活上では概ね問題がなく、生活できるということがある。

 しかし聴覚をもっていない、もしくは著しく困難な課題があるという障がい者。ここでは聴覚障がい者と一括りで表現する。この聴覚障がい者が日常生活をする上で考えなければならないことが・・・

音を拾うのはいいけど、どうやって発するの?

発するのは色々あるけど、どのようにして情報を得るの?

ということである思考に聞こえる人は障がい者について、考えたことありますか?また逆に聞こえない当事者としても音声についてどのように考えただろうか。私もかつてあまり考える機会がないまま成長していくうちに、大学時代の学びの中で考える機会があった。その学びとは、「きこえない苦労をプラスに変える」で挙げたエンパワーメント研修会の時なので詳しくはそちらを読んで頂きたい。

 また大学4年間を通して一番吸収したことは、聞こえない人の情報保障についてである。例えば、高校までの授業は教科書があり、教科書が手元にあればその内容を読むことの勉強方法がある。だからもし分からなくても教科書に目を通せばなんとか情報は得られるし、学ぶことができるわけである。だから普通学校に通う聞こえない学生でも独学で努力するという苦労話を聞いたことはある。

 ところが、大学では通用しないのだ。大学の学びというのは、教科書がないわけである。だから先生の話を理解しようと必死で、耳を傾けなければならないことがある。そこで私は、聞こえないことの障壁と向き合うことになるわけである。そこで出てきたのが、情報保障支援であるノートテイクとPCテイクの存在である。これについては、「情報保障支援の変化とコロナ禍」で少し掘り下げて述べているので、ぜひ読んで頂きたい。

 ところで情報保障支援はこれだけではない。もう一つ大事なのが、手話という言語であることを何度も繰り返し伝えていた。この手話言語について、手話サークルと手話通訳ということである。(※多くは、「手話言語通訳」と表記することになるがここでは「手話通訳」として略する。)この手話サークルの出会いも大学に入ってからである。

 最初は自宅近くにある手話サークルに参加したが、年ごとに各区の手話サークルにお邪魔する機会が増えてきたり、もちろん大学内にある手話サークル「sin college」というのも入った。またバリアフリー委員会の活動の一つとして毎週金曜日の夜に手話勉強会があって毎回参加して様々な学生に対して手話を学んでもらいながら交流を深めてきたことが懐かしい。

 大学卒業後では、地域の手話サークルということが多いわけだかこの手話サークルについて私が想うことを動画内では、歴史を振り返ってみることでぜひ、存在意義を大事にしてほしいと願っているわけである。(※第9回「聞こえない人のために出来ること①〜手話サークルと手話通訳」)

 手話を学ぶ機会は日常生活上だけではない。社会を生きる上で重要な情報を得るためには、手話通訳の存在も欠かせない。私は、仕事上で講演会などに行く時に必ず市の通訳派遣制度をお願いするようにしている。通訳派遣制度の利用は、合理的配慮の一つとして責任をもたなければならないという考えが少しずつ浸透しているが、実はまだまだ断ってしまうというケースが各地で少なからず起きていることがある。

 特にコロナ禍では、医療面に対して手話通訳を拒否されたという問題を聞いたときは非常にびっくりした。とても残念な問題であり、まだまだ手話通訳の必要性を考えさせることの機会はあると言っていい。遠隔手話通訳の支援を整えて行く動きがあるように、ウィズコロナ下での新しい情報保障支援が今後の方向性になるだろう。(以下、厚生労働省が発表している令和2年度補正予算案について「遠隔手話サービス等を利用した聴覚障害者の意思疎通支援体制の強化」参照。) 

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 また災害では、命に関わるので避難所における手話通訳の在り方だったり、今後はワクチン接種など、政府の情報発信はとても重要である。そこでTV報道では残念ながら、手話通訳のワイプ画面が出ないことがまだまだ多い。とても残念である。ワイプ画面が出る機会は、東日本大震災以降回数が増えてきたように見えるが実はリアルタイムの配信が改善しただけである。 実に言うと会見終了後に会見模様を流す番組ほとんどでは、ワイプ画面ではなくテロップで対応するなど、手話通訳が配置されていることを消しているというもったいないことをしているわけである。これが情報保障の充実といえるだろうかと疑問として考えなければならない。

 一つ、私が驚いたことがあり考えさせられることがある。それはある青年部活動で初めて韓国に行ったことがある。韓国では日本より、先に「手話言語法」が制定している国である。韓国での取り組みで、手話言語通訳がどのようになっているのか。実は大きな差がある一枚の写真を掲載する。

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 このように宿泊したホテル先やあちこちのテレビでは必ず、ワイプ画面での手話通訳が表示されている。どのテレビ局の報道番組だけではなく、ドキュメンタリーやバラエティーでも同じだという。住んでいる聞こえない韓国人に聞くとこれが当たり前だと聞いて、びっくりした。日本より積極的にワイプ画面で手話通訳が表示されているだけではない。字幕も100%ついているということの情報保障の充実は、絶対見習わなければならないところだという。他、海外の例も以下の通り引用する。

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海外では、当たり前のように手話通訳を含めて放映されていることが分かったので、日本でも一刻も早く対応して頂くことを強く願いたい。残念ながら、G7の中では唯一、100%と達成していないのである。
(※引用 https://twitter.com/interpretelsf/status/1243999274494550016/

 だから手話言語を理解し、活用するためにはもちろん手話通訳の育成や通訳することの環境整備もこれから真摯に取り組まなければならない。そのためには、私たち聞こえない人が手話に興味持たせるよう学習する・交流する機会を与え、一人でも多くの聞こえる人が私たちの声代わりとしての立場になって活躍してほしいと想う。そしてお互いに歩み寄る共生社会の実現が、最初に挙げた2つの疑問をゼロに打ち消すことになるのではないでしょうか。ということを込めて作った。ぜひ視聴してもらえば嬉しい限りである。