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「電話」の近未来予想図を考える

今年7月、私たちは一つの大きな障壁を一歩改善できた。それが電話リレーサービスの公共インフラ化である。正式にいうと、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」(令和2年法律第53号)が制定され、令和2年12月1日に施行しました。そして今は、24時間365日対応できこえる人もきこえない人も双方に電話でつなぐ当たり前の情報通信の時代になってきました。

ですが、まだ始まったばかりなので当たり前というゴールは実感湧きません。多くの課題が残されているわけです。その課題とは何か。

・電話オペレーターの人材不足

 この問題は、公共インフラ化するとそれなりに人数は多く求められてくるところですね。聴覚障がい者がいつどこで電話かかってくるかもわからない、深夜かもしれない。早朝かもしれない。そんな時にオペレーターがいなかったら困りますね。またオペレーターも24時間待機していくわけでもないし、交代する必要は出てくる。そうなるともっと多く必要とされます。しかし、オペレーターというのはきこえる人のよくある職業、電話オペレーター業務とは異なり手話言語を読み取ることや使いこなせることが絶対条件であるのでこれは手話通訳者だったり、手話検定2級以上の語彙力を要する方でないと難しい職業でもあります。

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また勤務に必要な条件だけではなく、オペレーター業務となれば時間の拘束があり、時給も発生するが決して高くともないし不定期なので収入が少ない。つまり他の仕事と掛け持ちすることになるので、労働基準法に沿って調整する課題もある。収入を安定させるために雇用側が時給を上げることを示す必要だか、まだ始まったばかりであり、財源確保は十分に整えていない。という課題がある。自治体の財源確保を約束できないとオペレーターを管理する運営自体が難しいので、協会・連盟の働きがけはこれで終わることなく今後も充実するための運動を継続しなければならない。と指摘する。

・電話リレーサービスの認知普及

 「電話リレーサービス」は最初、きこえない人を対象に試験的として日本財団がモデル事業として以前から始まったためにきこえない人の多くは認知が広がっているが、公共インフラ化ではきこえる人も対象になることが可能となった。しかし、きこえる人が利用するためにはまず情報を得るきっかけがないと難しいところである。ほとんどはきこえない人がかかってくることで、その時に始めてきこえる人が「電話リレーサービス」があるということを耳に入るわけである。

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そのため、政府(総務省)などはテレビCMや広告などで啓発活動をしている。7月に始まったばかりなので、まだまだ認知が広がっていないし。どういうサービスなのか。公共インフラだからという言葉に慣れていない面は多い。今後も継続的に認知普及するためにもまず、聴覚障がい者の中で、電話リレーサービスとは何かを正しく理解していくことをもっと意識していかなければならない。筆者は、勤務先や関係するところへわざと電話リレーサービスを活用して連絡を取るようにすることで、存在を知ってもらうように心がけている。またメール以外にもこういう方法があるんだということを口添えて理解を求めるために啓発チラシの準備も個人で心掛けている。

・きこえる人の電話をかける上での文化の違い

筆者が何度もリレーサービスを利用する上で一度だけ、経験したある某企業に問い合わせする出来事である。某企業とはある大手スーパーで、求人面接に関することであった。

「私、耳がきこえないのでお電話失礼します。」

担当者「あのーすみませんが電話はできないんですよね?でしたら申し訳ございませんが、色々と立て込んでおりますので失礼します。面接に関しましては、お問い合わせ先にご連絡致しますので、そこで確認をお願いします。」

「すみませんが、電話は出来ないけれど対面で面接する際にコミュニケーションの配慮などで勤務することには支障ないものと考えています。ぜひ詳しく面接で確認して頂きたいんですが。。」

担当者「(オペレーターに当サービスの趣旨を確認する)そうですが、わかりました。ちょっと上司に変わりますのでお待ちください」

数分間待たされる。ようやく3〜5分後に上司が出てくる。

上司?「お電話変わりました。先程の者から、事情を聞きました。申し訳ございませんが、こちらとしても立て込んでいます。申し訳ありませんが、切らせてもよろしいでしょうか。回答は先程お伝えした通りに変わりありません。こちらとしては、電話が出来ないとなるとちょっと採用になることは保証出来ません。ご了承ください。」

と急ぎ足なのか。電話出来ないと勝手に認識された上で断るつもりなのか。曖昧な受け答えをして、オペレーターにも迷惑かけていたことがあった。このように企業によっては、オペレーターの役割を勘違いされて本人ではないとやり取りが難しいと偏見されて切ろうとするケースも少なからず、他のところで起きているじゃないかと筆者は思っている。「電話が出来ない=採用できない」の指摘ではなく、「公共インフラサービスの利用を否定し、本人問わずに採用の可否を勝手に判断されてしまう」という問題を指摘する。

 あくまで「電話リレーサービス」は、メールアドレスが明記されていなく問い合わせが分からない中で、きこえない人は電話番号しか記載している企業側の連絡のために使おうとした公共インフラサービスの一つである。つまり、企業側はきこえない人に対してメールアドレスでの連絡を整えていなかった。メールフォームがあるとはいえ、きこえない人が確認出来なかった、分からなかったかもしれない。姿勢に対して、ネット上で回答をする以外しか答えられないと否定する姿勢ということは、職業柄の対応なのか。本人確認がないと無理という前提である不理屈な条件であるので、職業選択の幅を狭くすることは問題ではないだろうか。合理的配慮の不憫だろうか。この問題点の整理もしっかり確認しなければならない。また急ぎ足でガチャ切りされるケースも多くある。筆者もガチャ切りされたことあった。このようにきこえる人の電話で、こういう文化もあるのか。と疑問を感じたのである。

・電話できない場所や不利的(制限ある)条件がある。

あるクレジット会社にトラブルがあったので、問い合わせたいためすぐに当サービスをご利用して取り急ぎでかけたことがある。

「あのー実は、耳がきこえないので電話にて失礼させて頂きます。メールアドレスがなかったので、取り急ぎなのでお掛けしました。」

担当者「あーそうですが、ちなみに本人でしょうか?こちらは本人とやり取りすることが前提でございます。第三者のやりとりには個人情報の守秘義務がありますので、対応しかねません。ご了承ください。何かあれば、HPにメールフォームがありますので、こちらにてご連絡ください。」

「今起きているトラブルですので、取り急ぎ確認したくておかけしております。きこえる人で言うと電話で確認を取るのと同じ形です。本人とやり取りしていることに変わりありませんが。」

担当者「個人情報上でのやり取りに第三者が介入しての対応は、貴社のルールでは申し訳ないが遠慮させて頂きます。本人でありましたら、メールフォームかFAX番号で連絡取ることは可能ですので、一度お持ち帰りして頂いて改めてお掛けください。」

「・・・分かりました。」(すぐ解決出来ず、時間を置いてメールフォームより解決した。この時点で、きこえる人より時間に差が出ていることは公平ではない対応だと疑問に強く感じた。)

 このようにきこえる人は、電話番号を見てすぐに問い合わせして口問のやり取りで早急に解決出来るメリットがある。しかし本人でないと個人情報というプライバシーを気にしていて直接やり取りすることが出来ない以上は、つなぎ合わせてくれないという条件制限が起きた。クレジットカード会社だけではなく、他にも企業によって本人同士のやり取りではないと受付出来ないじゃないかという捉え方も多く残されているのではないだろうか。

一番多いのは、自動音声オペレーターへの対応が難しいところである。直接人によるオペレーターではなく、機械による自動音声で対応することもある。この時に電話リレーサービスのようにうまく伝言出来ない内容が多い。結局、本人の問い合わせたい内容を電話で直々に伝えるためには、様々なルールや制限をどのようにしてクリアしていくのか。これはきこえる人の正しい理解が求められるので、難しいところである。

 この他にも挙げることない課題はあるかもしれない。ただ手話言語を活かして電話出来るという障壁は以前より大きく改善され、合理的配慮としてバリアを克服した一歩を踏み出したのは間違いない。聴覚障がい者にとっての明るい出来事であるといいたい。

では、未来の電話はどんな印象が予想できるだろうか。筆者なりの世界を述べる。まず、きこえる人の電話は、イヤフォンを片耳につければ電話を開く動作不要でスイッチひとつで繋がったり、車の運転中にボタンひとつでスピーカーに話せるようにつなげることが出来ているなどちょっとした差が生まれているのを気付きだろうか。(以下、イメージ図として引用。)

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 めちゃ映画のように格好良いと私は正直、憧れている。笑!警察や消防の仕事だってそうだし、航空機やタクシーもかな?オペレーターの多くもそうだしこのような職業が多くあるので、職業選択に電話は絶対必要な条件はあるという。

 これが聴覚障がい者にとっては、電話リレーサービスがあったとしてもこのような行動が出来ないと、実にまだまだ職業選択ではまだ公平になっていないと感じる。目でわかる電話というのは主に危険が伴うので、電話リレーサービスの理解はなかなか難しい点がある。これを逆手に考えてみたい。

警察や消防で出来るという役割は、きこえない市民から電話リレーサービスを通してかけてきたときに、すぐ手話言語でスムーズに対応できる職員がいると安心出来るのではないだろうか。リレーサービス対応の職員として雇用することも一つの方法である。

航空機だったら、非常時や緊急時のお客様の対応に向けて空港内に電話リレーサービスを受付しやすいように環境を整備することで万が一の連絡が確保できるよう働きがけることが大事ではないだろうか。パイロットが出来なくても空港で働ける選択肢がゼロというわけではない。きこえるCAや職員向けに手話言語を教えて接客サービスの向上になることも重要な役割ではないだろうか。また電話リレーサービスを通して各地につなげておくというのも一つの方法である。

オペレーターだったら、常に目の前に画面を置いてきこえる人が着信あったとしてもまず内容を説明して理解することや事前に理解できるような啓発をする上で使って頂くことが前提になるが、理解した上であればあとは問題なくオペレーター同様にきこえない職員が積極的に使いこなすということをアピールする機会をまず実践することが大事ではないだろうか。試験的導入をまず検討するところから始めて実績を視覚で理解してもらえるところが必要である。また世界各国では、どのように工夫しているだろうか。という情報を集めて、検討することも一つの方法である。という他にも色々と考えるような職業柄な課題は多い。これが一つずつ改善できるような未来になって欲しいと願う。

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(アメリカにある某スタバのドライブスルーの一例)

そして、現在はドライブスルーの問題も電話リレーサービスの技術を応用に活かして、モニター越しに注文できる仕組みがあれば良いと筆者は考える。またデリバリーも電話リレーサービスを通して発注することがある実践例を多く聴覚障がい者それぞれが多く出すことによって、企業側が理解していくことが第一歩であろう。実現した時、ドライブスルー対応も聴覚障がいを持つ従業員が働きやすくなるのではないだろうか。職業選択が広がることが出来ればこれこそダイバーシティ(多様性ある社会)の考えであると筆者は考える。