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市民への手話普及

この日、実は札幌市手話言語条例が制定して4年目を迎える記念すべき節目である。あっという間に4年経過したわけであるが、まだまだ市民に手話言語条例があるということの認識は低い。ただもう一つ、忘れてはならないのが実は手話言語条例の前にある条例が成立した。この条例がもう5年目経ったわけである。

「札幌市障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例」(以下、「情報コミュニケーション条例」とする。)

 全ての市民が、障がいの有無にかかわらず、等しく情報を取得し、互いに意思や感情を伝え合うとともに、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加し、心豊かに暮らすことは、私たちの願いである。
 平成23年の障害者基本法の改正においては、障がい者の意思疎通手段についての選択の機会の確保等が、共生社会の実現を図るための基本原則の一部として位置付けられたが、その機会が十分に確保されるに至っていない。
 私たちは、障がい者がそれぞれの障がいの特性に応じた手段により、情報を取得し、及びコミュニケーションをしやすい環境づくりを進めていかなくてはならない。
 私たちは、このような認識を共有し、一体となって、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進し、もって全ての市民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、ここにこの条例を制定する。        (※札幌市HP「札幌市障がい者コミュニケーション条例」より引用)

ここで挙げられる情報コミュニケーション条例と言語条例って何が違うのか。パッと見て分からないことが多いだろう。あまり関心薄いかもしれない。でもそこを把握して理解しておかなければ、手話普及するというのは色々と難しいと伝えたいので、今回書いてみることにした。

 この条例は、当初、手話言語条例を作るための過程の中で新しく出てきたことである。最初は「手話言語を認める」前提での条例制定が目標であったが、様々な障がい者団体が参加して検討する委員会の議論の中で、意見が割れていた末の結論でまとめられたものである。この結論で、情報コミュニケーションに関する法的基盤が整えたために次は言語を認めるという認知を広げようとしたものが、後に遅れて施行した「手話言語条例」である。

情報を得るために手話、点字、拡大文字などの様々なコミュニケーションツールをきちんと整備することによって社会参加できるようにするという意思疎通支援の確立が大きな柱であることが、「情報コミュニケーション条例」である。

 だから先に手話を言語として認め、それを普及し聴覚障がい者の人権を広く認め社会参加できることの「手話言語条例」というのは、「決める順序がおかしい。」「聴覚障がい者だけの狭い捉え方だ。」という意見があったわけである。中には酷い意見もあったわけだか、先日投稿した内容にあるようにやはり前例がないわけでそれを知らない方々が簡易に意見を述べるのは無理もない。まずは歴史を知り、その背景から必要性を認識させるということの働きがけが求められるために条例を決めるまでには、時間がかかったという苦労話がある。

と簡単に条例制定の裏側を伝えたが、ここではここで挙げられている手話の普及について見ていきたい。

市民への手話普及について「情報コミュニケーション条例」では、こう記載している。

(理解促進)
第7条 市は、障がい特性に応じたコミュニケーション手段に対する市民の理解を促進するため、障がい者及びその支援者その他の関係者と協力して、次に掲げる施策を行うものとする。
 (1) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段に関する普及啓発
 (2) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段を学ぶ機会の提供
 (3) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段を学ぶ取組への支援

市民への手話普及について「手話言語条例」では、こう記載している。

(市の責務)
第3条 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話を使用して日常生活又は社会生活を営む者及びその支援者その他の関係者と協力して、手話が言語であることに対する市民の理解を促進するための施策を行うものとする。
 (市民の役割)
第4条 市民は、基本理念に対する理解を深め、前条の市の施策に協力するよう努めるものとする。

どちらも理解普及、啓発に努めるという文言があるわけだか認識としては前述が意思疎通支援としての手段として得るということ、後述は言語として情報アクセスするためのものとして得るということという風に示してるわけである。分かりづらいがこの違いが、きちんと普及しているかどうかの微妙な判断になることだと私は考えている。

聴覚障害者協会はどちらかの理念に基づいて、適切な範囲で手話普及に努める施策として

1)手話講習会・中級手話講習会・手話通訳者養成講座の実施

2)ミニ手話講座による市民参加の拡大

を行っている。また手話動画を作成して理解普及する活動も行われている。

 しかし、これは残念ながら理解する程度で終わりさらに活用するというレベルになっているかどうかは、受講しようと決める学習者次第である。特に企業や行政の学習機会がまだまだ少ないので、全体としては普及されていないという受け止めがあることに留意しなければならない。

もう一つ加えるとしたら、副業ビジネスとして簡単に手話普及する団体も増えている動きがある。条例制定という法的背景を強く理由づけるとして、簡易に手話を学ぶ機会を広げていくということは、批判するという方々もいるわけだか私はそう思っていない。

少なからず、ビジネスはそれでいい。でも間違った手話に関する知識を教えたり、変な手話表現を教えることによって、言語としての理解が偏ってしまうことは避けて欲しいと願っている。言語として様々な表現があるのではなく、あくまで手話は色々な捉えがあるということを踏まえて学ぶという機会を作るということがあれば、何でも方法はあっていいと考える。特にろう学校では、学校現場としてきちんと言語を学ぶ・知る機会が必要である。

 そこで私は教育面に要点を絞って比較した鳥取県、神奈川県を紹介した。YouTube配信動画「手話言語条例制定」をぜひ視聴してもらいたいと思っている。この動画内のような成果をぜひここ札幌市・北海道でも見られるようにもっと頑張ってもらわなければ、タイトルに挙げる手話普及はまだきちんと成立していないことを改めて知って頂ければ幸いである。