耕し初日


とにかくどこか掘ってみよう。とシャベルで道路に近いほうを掘り始めた。
思っていたよりずっと堅い。ぜんぜんシャベルが入っていかず、少し入ったかと思えば今度はカチンと何かにぶちあたる。石だ!石だらけだ、こりゃ大変だ、お先まっくらだ。と早くも心が萎え始めた時に、夫くんから違うところを掘ってと場所指定が。どうやら彼には何か計画があるらしい。
言われた場所を掘り始めると、先ほどとは違う感触。少し湿っていて柔らかく感じる。石はごろごろ出てくるけど、思い描いていた黒い土が見えてきてほっとする。シャベルで少しずつ掘り進めると、大きなミミズも出てきた。小さなアリやダンゴムシも突然やってきた怪獣シャベルに慌てふためいて逃げはじめた。
ごめんよ、おどろかせて。
虫がいるのだから、ここの土は悪くないはず。30分も掘ると土の塊か、石かの見分けもつくようになり、楽しくなってきた。
触ると少しあたたかい。土ってなんか気持ちいい。きっと人間のDNAには土への愛着心が刻みこまれているんだ。みんな土を耕し食物を育てて生きながらえてきたんだから当たり前といえば当たり前なのだが、ずっと都会暮らしだった自分にそんな人間らしい感性が残っているとは思わなかった。
そんなことを考えながら掘っては、石を掻き出し、さっきより大きいぞと小さな喜びを見出しつつ時間がたった。遅々として進まない私の掘削をみかねて夫くんが参戦。掘り出したら早い早い、使っている道具も違う。その3本の刃がついている道具はもしかしてクワというやつか?スキっていうのも聞いたことがあるぞ。
恥ずかしながらこの年までクワとスキの違いを考えたこともなかった、もちろん知る由もなく。まあ、とにかく適した道具を使うことが肝心で、そういや絵本に登場する農夫も大概このクワっぽいのを携えている。
2人で掘ること2時間、こんなに時間をかけたのに面積でいうと畳一畳半ほどだろうか。深さ30センチほどは掘った。
夫くんの計画は、まずこの穴をつかって刈った草を利用して土にまぜる堆肥をつくるというもの。毎年草刈りの後は刈った草をビニールに入れて捨てていた。その作業もバカにできない重労働だから、捨てずに堆肥にできるなんて一石二鳥どころではない。さっそく検索して堆肥の作り方を見る。
ふむふむ米糠を入れて発酵させるらしい。小山にきて驚いたことのひとつに、街中のいたるところに精米機が設置されている。そしてそこにはフリーでもっていっていいという米糠がある。でも先週あたりから筍が出回りはじめ、一年で一番米糠が必要とされる時期。はたして近所の精米機に米糠は残っているだろうか。


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