『情熱大陸』とにかく明るい安村編 密着後記
先日、とにかく明るい安村さんの『情熱大陸』が放送されました。今回はその密着の裏側について書こうと思います。
取材が始まったのは4月中旬。ジョージアでのゴットタレントに挑むという安村さんの準備に伺いました。
そこで行われていたのはジョージア語のレッスン。安村さんは必ずネタを現地の言葉で披露します。
英語でも通じるはずですが「外国人のタレントが日本でネタやるとして、英語でやるよりカタコトでも日本語でやってくれた方が盛り上がるじゃないですか」とこともなげに言う安村さん(その後「難しい…」と何度もぼやくのですが笑)。
海外ロケ① ジョージア
4月下旬、ジョージアへ出発。ジョージアまではイスタンブール空港で飛行機を乗り継いで13時間です。プライベートでなかなか「ジョージアに行こう!」とはならないと思うので、これもこの仕事ならではの体験…と楽しみにしていましたが、久々の長距離フライトで早速フラフラに。
アメリカから始まったゴットタレントは、今や世界中の国にフォーマット販売されています。今回安村さんはジョージア版の予選に参加するのですが、日本のテレビとの違いに大いに戸惑うことに。
会場についても台本やスケジュール、香盤表といった日本のテレビ収録現場では当たり前のようにあるものが何もありません。もちろん説明もありません。
突然リハーサルに呼ばれ、突然スタンバイを命じられます。リハーサルの様子はオンエアになった通り、グダグダの極み。日本であれば事前にネタを全スタッフで共有して、まずスタッフリハを行ってから出演者を迎えますが、そんな準備はありません。「これ本番大丈夫なのか…?」と冷や冷やしながらカメラを回していました。
いかに日本のテレビ番組が効率的に収録しているかを痛感するとともに、誰も焦らず明るく仕事をしているジョージアのスタッフを見ていると「日本人が働きすぎなだけでは…」と思ったりもしました。
ちなみに、安村さんのゴットタレント挑戦の裏側を撮影できたのは今回が初。貴重な体験をさせていただきました。
予算の都合で、現地に帯同した情熱大陸スタッフは僕1人。三脚を担いで安村さんについて回ります。どうしても2カメ回したいときはコーディネーターさんにお願いしていました。
難解な現地語に挑み、アテンドもろくにないなか、本番では爆笑をかっさらう安村さん。舞台袖から撮影していましたが、素直にカッコよかったです。
オーディションの間のお楽しみは現地の食事とお酒。僕はお酒が飲めないので食事をメインに堪能させていただきました。
海外ロケ②クロアチア~イギリス
5月下旬、安村さんを追いかけて再び海外へ。今度はクロアチアです。
打ち合わせでクロアチアの情報を聞き取り、オリジナルの全裸ポーズを考えていく安村さん。ただクロアチアに入って現地の人と話す中で、よりウケるポーズを模索し、いくつも変更していました。
このクロアチアで事件が起きます。
カメラが入った僕のトランクが、乗り継ぎのイスタンブール空港でロストしたのです。予備のカメラは持ち込んでいたものの、メインカメラがなくてはオンエアの質が下がってしまいます。
そのトランクにはカメラだけでなく、様々な機材の充電機器、そして気合いを入れるべくお気に入りのTシャツたちが入っていました(これを安村さんには「捨てていいやつで来ないと!」と言われるのですが…)。ちなみに安村さんも一度ロストしたことがあるらしく、それ以来すべて機内持ち込みにしているそうです。
いったん安村さんと別行動し、現地で機材や着替えを購入。予想外の出費となりました。英語で航空会社にメールを送り(もちろん翻訳サイトを駆使)、なんとか本番までに間に合ってくれ…と祈り続けました。
結果、本番前にトランクがテレビ局に届き、なんとか撮影を終えることができました。安村さんはここでも爆笑を取ります。すごい。
そして本番を終ると、すぐに空港に向かいます。今度はドイツ経由でイギリスへ向かうのです。よく芸人さんの「ルミネから幕張へ飛び出しで移動」は聞きますが「クロアチアからイギリスへ飛び出しで移動」というのは安村さんくらいではないでしょうか。
オンエアで映っていたプロペラ機はクロアチアからドイツへ向かう時に乗った飛行機です。
この移動が今回の撮影で一番キツかったです。マネージャーさんが帯同しておらず、移動は僕と安村さん2人きり。乗り継ぎの時間も短いので、常に不安が付きまといます。
ドイツで乗り換えるときは2人ともフラフラで、僕は一応カメラを回しているのですが
「疲れましたね…」
「はい、疲れました…」
「ハハハ…」
「ヘヘヘ…」
と壊れかけのおじさん2人の会話が記録されていました。
イギリス版ゴットタレントは、日本でいう紅白歌合戦のような国民的番組です。去年そのファイナリストになったことで安村さんは世界的にブレイクするのですが、今年はサプライズゲストとしての出演オファーがあったのです。
ただシークレット出演のため、控え室から出られないうえに待ち時間がとんでもなく長く、いつ声がかかるかわからないのでひたすら待ち続けます。そんな中でも度々控え室を訪れるスタッフたちが「Welcome back, TONY!」と歓迎しているのが印象的でした。
本番では、サプライズで登場した安村さんに会場は総立ち&大歓声。オンエアで入っているのは生放送の様子です。ちょっと鳥肌が立ちました。
ロンドンで取材をしていてビックリしたのは、物価の高さです。円安の影響でラーメン1杯が3000円ほどするのです。買い物もあまりする気にならず、粛々と過ごさざるをえなかったのが残念でした。
海外ロケ③ 二度目のイギリス
7月中旬、安村さんがロンドンで単独ライブを開催するというので再び渡英しました。
今回は初めてカメラマンが同行します。これまで和牛や華大さんの情熱でもお願いしてきた、おっちゃんカメラマンです。このおっちゃんカメラマン、ロケで飛び回っているおかげで空港のラウンジを使うことができました。最高ですね、ラウンジ。
ロンドンまでは直行便だったのですが、今ロシア上空を飛べず北から遠回りするので、14時間かかります。しっかり寝てもまだ8時間あったりして、なかなか大変でした。
機内では事前にスマホにダウンロードしていた『FALL』という映画を観たのですが、地上600mの鉄塔の上に取り残される恐怖を描いた作品で、飛行機の揺れと鉄塔の揺れがリンクして恐怖が倍増するリアル4D体験も。
これまで何度も海外でネタを披露してきた安村さんですが、今回は少し違いました。ゲストがいるとはいえ90分という尺のライブ。さらにお客さんは無料の観覧ではなく、チケット代を払ってくれた人たち。
本番前に何度も英語のコメントを繰り返す安村さんから初めて「怖い」という言葉が漏れました。
7月12日の夜9時30分。直前まで「怖い」を連発していた安村さんでしたが、ステージでのパフォーマンスは圧巻でした。汗だくになりながら、10分予定のところを20分もネタをノンストップで披露。会場は拍手喝采です。
ゲストの市川こいくちさん、ウエスPさんのネタも大盛り上がり。ゲームコーナーも異常な熱気でそのままライブを終了。
そしてこのライブで、約3か月にわたった密着取材も終了です。
僕が感じた思いは最後のナレーションに込めました。
「人生の不確かさを楽しめるこの男は、強い」
個人的にも大きく環境が変わる時期で、安村さんの生き方に大きな刺激を受けました。人生に大きな期待も不安もないと言いながら、目の前の仕事はちゃんと取り組む。そしてその結果には身を任す。
海外ロケでの刺激だけでない刺激をもらえた3か月でした。海外だけでなく国内で取材でお世話になった方々、マネージャーさん、そして安村さん、ありがとうございました!
とにかく明るい安村さんの『情熱大陸』はTVerで7月28日まで配信中です。
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