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AD1年目の、ある冬の日の話。

東京の我が家に、大阪から2つのカップヌードルが届きました。日清と『魔法のレストラン』放送20周年記念のコラボ商品です。コラヌードルの発売を知った僕がツイッターでつぶやいたら、番組スタートの時から携わっているスタッフのひらいさんがわざわざ送ってくれたのです。

『魔法のレストラン』とはMBSで放送中のグルメバラエティで、僕が新入社員のときに初めて配属された番組です。僕は中学生の頃にお笑いが好きになり、正月には友だちと集まって録画していた『オールザッツ漫才』を見てあーだこーだ言うような10代を送っていたので、当然バラエティ番組を希望していましたが、蓋を開けてみれば配属されたのはまさかのグルメ番組。想定外のAD生活の始まりでした。

ロケハンと称して、毎日のように飲食店を訪れました。「餃子特集」なら餃子が美味しそうなお店を4,5軒はしごするのは当たり前です。スタッフ数人でシェアしながら、胃袋の限界まで食べまくりました。

会議のケータリングを用意するのもADの大事な役目でした。グルメ番組だけあってケータリングも「適当にチョコとガム」では済まされず、毎回スタッフの好みを考慮したうえで選んで用意しました。ある時、変わり種のおにぎりを買ったら「こんなんちゃうねん。山内が食べ」と回ってきたこともありました。ケータリングも相手のことを考えて買う。番組制作と通じるところもあると思います。

厳しくも優しい先輩がたに手取り足取り教わり(怒られ)、ひたすら番組制作の基本を学びました。その時にお世話になった先輩の一人がひらいさんです。

僕はたった8カ月しか『魔法のレストラン』に携わらなかったにも関わらず、その後もよくしてくださり、東京に転勤になった時も送別会を開いていただきました。

今回も発売と同時に品薄になったコラボヌードルをわざわざ手に入れて、東京まで送ってくれました。本気のコラボレーション、めちゃくちゃ美味しかったです。

僕がAD1年目だった時、ひらいさんと色んなロケをさせてもらったのですが、中でも忘れられない出来事があります。

タレントロケを翌日に控えたある冬の日、ひらいさんが僕に言いました。

「明日までにペ・ヨンジュンのカツラ用意してくれる?」

当時(2004年)は『冬のソナタ』ブームで、出演者が扮するキャラといえばヨン様でした。

そんなものドン・キホーテで一発だろうと思っていたのですが、どの店舗も品切れでした。ヨン様に扮していたのは芸能人だけでなかったのです。パーティーグッズを取り扱う問屋さんに手当たり次第電話しましたが、ヨン様のカツラは全く見つかりません。

なんやねんあいつ。まったく悪くないのですが、ヨン様に腹が立ってきました。そしてカツラを被るのはトミーズ健さんだといいます。なんやねんあいつ。何も悪くないトミーズ健さんにも腹が立ってきました。

時刻はすでに午後4時をまわっていて、関西での入手を諦めた僕は東京の問屋に問い合わせをして、そこでようやくひとつヨン様のカツラを手に入れたのです。

そこからバイク便を手配し、新幹線便に乗せてもらい、大阪へと送ってもらいました。ヨン様のカツラが時速300kmで移動していると思うとちょっと笑えましたが、とにかくミッションをクリアしたことで胸をなでおろしていました。(ちなみに東海道新幹線の新幹線便は2006年に終了しています)

無事届いたヨン様のカツラ。翌日のロケではトミーズ健さんがロングコートを着て東京から届いたヨン様カツラをかぶり、

「健ちゃんパウダ~!」

と、ヨン様と全く関係ない、いつものギャグを繰り出していました。冬になるとたまに思い出す、ひらいさんとヨン様とトミーズ健さんの話です。