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とーます模話食べ物シリーズ:忘れえぬ外食記1「銀座天龍①」

天龍はいまは店舗移転したが、同じく銀座にあって…
相変わらずの行列店として人気だ。

この店といえばジャンボ餃子。
八重洲泰興楼のバナナ餃子ももちろん有名でおいしい。
しかし「餃子を食べに行く」となると…私はやはり、
天龍ということになる。

昨年、銀座の天龍に実に10年以上ぶりに行った。
東京を離れていたので…移転していることも知らなかった…

1時間近く並び、待望の餃子ライスにありついた。
値段は少し上がっていたが、まあ、仕方あるまい。
この程度の値上げで済んでいると思った方がいいかもしれない。
この店の餃子ライスの満足度からすると…決して高いとはいえないかもしれない。


待望の大きな8本の餃子の皿に小さなライスが着く。
少ないが漬物もある。
湯呑みと変わらない容器のライス。
やよい軒の弁当の特盛ライスと同量をここで食べるとするなら、
ここでは餃子より高い値段になることであろう。

餃子のたれを入れる皿を2つ用意する。
1つは酢醤油にラー油を少しのもの。
もうひとつは、辛子だけを端につけたもの。
ここで、餃子を嚙む。

天龍の餃子の肉汁はすばらしい。
小籠包のごとく、汁が出てくる。
口の中に向かって肉汁を解き放ったら、
3日は食事に支障が出るくらいのやけどを負う。

行儀はいいとは言えないかもしれない。
熱々できたての焼き餃子を嚙みながら、
肉汁を餃子の先端などの隙間などから小皿に解き放つ。
ちょいとこつがいるが…
出たがる肉汁の道をみつけて出してあげるのだ。

もちろん、できる限り肉汁は味わいたい。
しかし、やけどはしたくない。
冷めるのを待つのも我慢ができない、すぐ食べたい。

なんとか、だましだまし、熱々の餃子の皮と具を
うまいこと冷ましながら食べる。

うまい!

豚肉とネギが主で、にんにくもニラも入っていない…
口臭をきにしなくてもいいという安心感と…
ニラもにんにくもないのにこんなにうまいという感動。

二つ目。
厚い皮も、雑にはがすと破けることがある。
ゆっくりとはがす。

無事に二つ目を箸に挟み、口にもっていく。
ゆっくりゆっくり、動かしながら、
気がはやる体の欲求を抑える。

小さなライス碗の上にのせる。
ごはんといっしょに食べる。
このごはんがもっとたくさんあったらいいのに…
しかし、これはこれで天龍での餃子ライスの醍醐味かもしれない。

わずかの白い飯と、巨大な8本の餃子をバランスよくやっつける。
まさに孤独のグルメだな…
たのしいといえばこんなたのしいことはない。

ルールが厳しいほどゲームは盛り上がる。
狭い店内で、小さい碗飯で、巨大な餃子を
やけどに配慮しながら、
黙々と食する。

ばかみたいだが…60過ぎても…たのしいものはたのしい。

2つの小皿、一つ目の皿にだんだん肉汁がもれて…たれの味が薄くなる。
たれを足す。
肉汁を受ける辛子のみの皿も、汁が増えてきた。

肉汁がもったいないので、
適宜食べかけの餃子の具に吸わせるように
つけて食べたり、
肉汁をのむなりをする。

3本目が終わる。
残り5本。
記憶が確かならば、ここの餃子は4本がくっついていて、
8本だと、4本、4本で皿に盛られてくる。
4本は後半の分だ。
まだ4本あるのだなと思うと、とてもうれしい。

5本目は、ほどよく冷めてきたので、
一気に食べる。
いやあ、おいしい。
なんておいしいのか…
ちびちび食べてもおいしい。
一本まるごといってもおいしい。
ジャンボ餃子ゆえに
一本でも口の中がいっぱいになるのがたのしい。

空腹がおさまり、セロトニンによる幸せ感が出てくる。
アドレナリンはそれでもまだまだ…4本では満足できないと…
食べるスピードは落ちない。

冷たい水を飲む。
ご飯はセーブしながら、量を調整しつつ食べているが、
できたらお代わりしたいが…ここでお代わりするなら、
この後どこかの店に行って、はしごするときの代金に
ここのお代わりご飯の金額分を充てたい…
我慢することにした。


辛子をたくさんつけて食べ、
ラー油を足して食べ、
たれをたっぷりつけて食べる。
肉汁をなんとか無駄にしないで食べる。

しかし、天龍の餃子…
いちばんは何もつけないで食べることが
いちばん好きなのだ。

残り、3本、2本、1本…名残おしいが…
満足感が違うのだ…ここの餃子は。

完食。


何歳まで一度に8本食べられるだろう?
味はあまり変わっていない気がした。
ずっと続いてほしい店だ。

おいしかった…池袋のほうが銀座店よりは混んでいないかもしれない。
次は、池袋に行ってみよう。