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とーます模話のこざこざシリーズ 22「わたしが好きな俳句 画像、映像を想起させる一句① 高濱虚子」

遠山に日の当たりたる枯野かな(高濱虚子)


遠州の山間に育った私は子どもの頃、
冬になると友達と一緒に、農家の友達の田んぼを借りて
草野球などをしていました。

山間では冬になると午後3時には、
太陽は山に隠れて見えなくなります。

乾いた田んぼの野球場は、だんだんボールが見にくくなっていきます。

寒さと疲れでボールを拾いに行くのもおっくうになります。

辺りは日が翳りつつあります。
でも、まだ空は青い。
真っ暗になるまではまだまだ時間があります。
できるだけ長く遊んでいたい子どもたち…

高い遠くの山を見るとまだ日が当たって山肌は暖かそうに感じます。

私はいまでも、あの頃の遠州の遠山に日の当たる光景を思い出すことができます。


高濱虚子氏のこの句は写生句としてとらえたときに、
私の子ども時代の記憶の風景と同じ光景を、
的確にとらえていると感じるのです。


風景画というよりは、古い写真のような味わいがあると…
私には感じられて、大好きな俳句なのです。




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